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五条弾とくのたまちゃん
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概要
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No.28
#五条弾とくのたまちゃん
デフォ名垂れ流し
10. 指先の温度(行きつけ/ループ/相容れない)
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彼女は友達が少ない。特に女の子の友達は、ほぼいない。
それには色々な理由が存在するが、その件については今までに数度ご説明したこともあります故、今は割愛とさせていただく。
とりあえず、彼女は友達が少ない。
なので特に、女の子同士でするようなカフェで駄弁るということはあまりしたことがなく、行くのはいつも同じお気に入りの喫茶店で、一人で本を読んでいたりスマホを弄ってみたり、そういうことをしていた。
その喫茶店は少し道から奥まったところにあって、昔押都に連れてきてもらって知った店である。あまり若い女の子が好むような外観ではなく、レンガ造りの二階にあるという店構えは、看板も小さく、ぱっと見は喫茶店ともわからない。
置いてあるのは濃いめのコーヒーと、焼きっぱなしのどっしりした田舎風のケーキくらいで、写真映えするようなものでもなかったので、大学の同級生にかち合う心配もなく、彼女は五条と待ち合わせのある日の午後、大抵その喫茶店で時間を潰していた。
だからその姦しい大学の同級生の女の子たちがどうしてその店にやって来たのか、彼女には全然訳がわからなかったけれど、わやわやと普段の店内とは違う若い女の子の声がして、怖がるように端っこの席で縮こまっていたのも、仕方のないことだった。
「え、どうしたの? 今日なんか、元気ないね?」
なので五条と待ち合わせした駅で会ってときも、ふに…と少し情けなく眉を下げて少し気落ちした表情をしていて、適当に夕飯を食べてから一緒に最寄りのスーパーまで歩きようやく事の次第を聞き出した五条は、あらあら可哀想に…と彼女の髪をそっと撫でた。
彼女の行きつけの喫茶店にやって来た女の子たちはわやわやと他愛ない話をしていて、聞くつもりはなかったが同じ年頃の女の子の会話というものを、聞いてしまった。その中には、「カレシに依存しすぎる子ってウザいよね」みたいなお話もあった。
「わ、私……、いつも五条さんに会いたいって思って、今日もお誘いしてしまって……、いつも五条さんとばかり一緒にいるし……。
ご、ご迷惑じゃ…………」
「いやいやいやいや、待って」
一般的には、確かにそういう「あんまりベタベタしたくないなぁ〜」のカップルもいるだろう。確かに、五条もどちらかと言うとそういうタイプである。いや、そういうタイプであった。
殊、対ミヨシちゃんに対してはおバグり申し上げることの多い五条さんなので、彼女がにぃにぃ言いながら自分にぺた…とくっ付いてくるのが大好きだし、彼女はいつも「五条とばかり一緒にいる」と言うが、五条が一緒にいないときにはよく雑渡や押都が彼女をあちこちに連れ出しているのを、五条さんはよく知っている。この間なんか、「押都さんとこの間出かけた時に、港の観覧車に乗ったんですけど……」と来た。
なんで、親戚の女の子と出掛けるのにわざわざ港の雰囲気のいい夜景の観覧車に乗る必要がありますか……!!!と五条は思った。そんなの自分が連れて行ってあげたいし、「綺麗ですね」って言って笑う彼女が見たいし観覧車の中でイチャイチャしたい。
それがなくても、大学のサークル活動で同年代の男の子と出掛けるのも多いのである。これ以上自分と一緒にいる時間と頻度を減らされては堪らないと、五条は大きく首を振った。
「全然迷惑なんかじゃないし、そもそもミヨシちゃんは全然俺とだけいてくれてない」
「そ……、そうですか……?」
五条の剣幕に彼女は少し驚いた素振りをして、へに…と首を傾げる。「そう」 五条はしっかりと大きく頷いた。
「押都さんと観覧車とか行っちゃうし、浮気だと思う」
「えっ、えっ……。ちが、違いますぅ……」
「違わない。ちゃんと俺とも観覧車に乗ってほしいし、観覧車の中でイチャイチャもしてほしい」
「長烈さんとイチャイチャとか、してないですよぉ……」
「じゃあ観覧車」
「……ン」
欲望のままに押して押して彼女にデートに出掛ける約束を取り付けると、五条は片手に持ったスーパーの買い物袋を持ち直して、機嫌良く彼女の手のひらを握った。彼女の些細な悩みはいつの間に五条の勢いに押し流されて、「う…浮気じゃないもん……」と小さくブツブツと彼女は顔を赤くして否定の言葉を重ねている。
女の子の友達は、いれば彼女も喜ぶだろうけど、まぁいなくてもいいかな、と薄情に五条は思っている。だって女の子の友達がいたら、こんな勢い任せの彼女への騙し討ちとか誤魔化しとか、そういうものがぜんぶバレて、彼女の視界にあるのはできれば自分だけでいて欲しいなんていう、五条のクソ重たい感情も魂胆も、バレてしまいそうだし。
「観覧車、楽しみだね」
「……うん」
そう言った五条に嬉しそうに頷いてみせた彼女には多分、もう他の女の子たちからの雑音なんて、聞こえていない。それでいいと思っている。
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2065文字,
2025.07.09 22:41
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デフォ名垂れ流し
10. 指先の温度(行きつけ/ループ/相容れない)
彼女は友達が少ない。特に女の子の友達は、ほぼいない。
それには色々な理由が存在するが、その件については今までに数度ご説明したこともあります故、今は割愛とさせていただく。
とりあえず、彼女は友達が少ない。
なので特に、女の子同士でするようなカフェで駄弁るということはあまりしたことがなく、行くのはいつも同じお気に入りの喫茶店で、一人で本を読んでいたりスマホを弄ってみたり、そういうことをしていた。
その喫茶店は少し道から奥まったところにあって、昔押都に連れてきてもらって知った店である。あまり若い女の子が好むような外観ではなく、レンガ造りの二階にあるという店構えは、看板も小さく、ぱっと見は喫茶店ともわからない。
置いてあるのは濃いめのコーヒーと、焼きっぱなしのどっしりした田舎風のケーキくらいで、写真映えするようなものでもなかったので、大学の同級生にかち合う心配もなく、彼女は五条と待ち合わせのある日の午後、大抵その喫茶店で時間を潰していた。
だからその姦しい大学の同級生の女の子たちがどうしてその店にやって来たのか、彼女には全然訳がわからなかったけれど、わやわやと普段の店内とは違う若い女の子の声がして、怖がるように端っこの席で縮こまっていたのも、仕方のないことだった。
「え、どうしたの? 今日なんか、元気ないね?」
なので五条と待ち合わせした駅で会ってときも、ふに…と少し情けなく眉を下げて少し気落ちした表情をしていて、適当に夕飯を食べてから一緒に最寄りのスーパーまで歩きようやく事の次第を聞き出した五条は、あらあら可哀想に…と彼女の髪をそっと撫でた。
彼女の行きつけの喫茶店にやって来た女の子たちはわやわやと他愛ない話をしていて、聞くつもりはなかったが同じ年頃の女の子の会話というものを、聞いてしまった。その中には、「カレシに依存しすぎる子ってウザいよね」みたいなお話もあった。
「わ、私……、いつも五条さんに会いたいって思って、今日もお誘いしてしまって……、いつも五条さんとばかり一緒にいるし……。
ご、ご迷惑じゃ…………」
「いやいやいやいや、待って」
一般的には、確かにそういう「あんまりベタベタしたくないなぁ〜」のカップルもいるだろう。確かに、五条もどちらかと言うとそういうタイプである。いや、そういうタイプであった。
殊、対ミヨシちゃんに対してはおバグり申し上げることの多い五条さんなので、彼女がにぃにぃ言いながら自分にぺた…とくっ付いてくるのが大好きだし、彼女はいつも「五条とばかり一緒にいる」と言うが、五条が一緒にいないときにはよく雑渡や押都が彼女をあちこちに連れ出しているのを、五条さんはよく知っている。この間なんか、「押都さんとこの間出かけた時に、港の観覧車に乗ったんですけど……」と来た。
なんで、親戚の女の子と出掛けるのにわざわざ港の雰囲気のいい夜景の観覧車に乗る必要がありますか……!!!と五条は思った。そんなの自分が連れて行ってあげたいし、「綺麗ですね」って言って笑う彼女が見たいし観覧車の中でイチャイチャしたい。
それがなくても、大学のサークル活動で同年代の男の子と出掛けるのも多いのである。これ以上自分と一緒にいる時間と頻度を減らされては堪らないと、五条は大きく首を振った。
「全然迷惑なんかじゃないし、そもそもミヨシちゃんは全然俺とだけいてくれてない」
「そ……、そうですか……?」
五条の剣幕に彼女は少し驚いた素振りをして、へに…と首を傾げる。「そう」 五条はしっかりと大きく頷いた。
「押都さんと観覧車とか行っちゃうし、浮気だと思う」
「えっ、えっ……。ちが、違いますぅ……」
「違わない。ちゃんと俺とも観覧車に乗ってほしいし、観覧車の中でイチャイチャもしてほしい」
「長烈さんとイチャイチャとか、してないですよぉ……」
「じゃあ観覧車」
「……ン」
欲望のままに押して押して彼女にデートに出掛ける約束を取り付けると、五条は片手に持ったスーパーの買い物袋を持ち直して、機嫌良く彼女の手のひらを握った。彼女の些細な悩みはいつの間に五条の勢いに押し流されて、「う…浮気じゃないもん……」と小さくブツブツと彼女は顔を赤くして否定の言葉を重ねている。
女の子の友達は、いれば彼女も喜ぶだろうけど、まぁいなくてもいいかな、と薄情に五条は思っている。だって女の子の友達がいたら、こんな勢い任せの彼女への騙し討ちとか誤魔化しとか、そういうものがぜんぶバレて、彼女の視界にあるのはできれば自分だけでいて欲しいなんていう、五条のクソ重たい感情も魂胆も、バレてしまいそうだし。
「観覧車、楽しみだね」
「……うん」
そう言った五条に嬉しそうに頷いてみせた彼女には多分、もう他の女の子たちからの雑音なんて、聞こえていない。それでいいと思っている。
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