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No.26

#名探偵コナン
諸伏高明✖️裏垢女子

 しげしげ、と言わんばかりにコウメイさんが私の足や胸元を眺めている。捜査ニ課が所謂キャバクラ内の内偵するのに人員として駆り出されてきたのたが、キャバクラ嬢さんのドレスとはそこそこに際どいものも多い。胸元は谷間ができるようにヌーブラを仕込んであるし、体のラインが出るように作ってあるドレスはそもそも生地が薄く、足のスリットもかなり際どい。
 
「あの、あまり見られると恥ずかしいですが」
「ああ、すみません。あまり馴染のない恰好をされているので」

 確かに諸伏さんがキャバクラに行くところなど、あまり想像できるものではない。私が恥ずかしいです、と言ったので彼は真正面からしげしげと見つめるのを止めて、私の隣に掛けた。二課突入までの補佐をしたはいいが、普段履きなれない10センチの厚底ピンヒールで事後処理中に転んで転倒し、足を捻って病院送りに至ってしまった。軽い捻挫だそうが、二課課長が気を回して諸伏さんをお迎え役として呼んでくれたらしい。今日はこのまま直帰である。

「このドレスは貸与品ですか?」
「こういうののレンタルのお店があるらしくて、そこから。明日返却します」
「成程」

 諸伏さんはまだしげしげと私を眺めていたが、会計の受付から私の名前が呼ばれると、私の代わりに返事をしてさっと立ち上がった。さっさと支払いを済ませてくれて、隣の院内薬局でもらうように、と処方箋も貰ってきてくれる。

「立てますか」
「何とか」
「……抱えていったほうが、早そうですね」

 よろよろと、なんとか立とうとした私に、諸伏さんはあっさりとそんなことを言うと、腰に手を回して軽々と抱き上げた。普段こうして抱き上げられることもあるので、彼が私を抱き上げられるほどには鍛えているのを知っているけれど、実際に公共の場でされると気恥ずかしい。

「……はずかしい」
「ふふ、あなたもそんな風に恥ずかしがることがあるんですね」
「さすがに」

 夜間の病院待合は人が少ないと言っても、受付に夜勤の人はいるし帰宅途中の病院スタッフもいる。あらあら、と言うような表情で見られて、私は羞恥に諸伏さんのジャケットに少し顔を寄せて、視線を遮った。

「これ、労災ですよね。顛末書書くのも恥ずかしい」
「突入後だった、と聞いてますから、まぁ」
「立ち上がろうとして、転んだだけなんです……。お恥ずかしい」

 ぼそぼそ言いながら、諸伏さんがしてくれるままに駐車場まで連れていってもらい、そこで諸伏さんは私を一度下ろした。車の鍵を開けるためだ。彼の大きな足の上に乗っているように言われて、言われた通りに靴の上に乗る。その分距離が近くて、彼の整髪料の香りが少しだけした。

「さて」
「はい?」

 車のドアを開けると言ったはずの彼は、自分の足の上に乗った私の腰を抱くと、上から私を覗き込んで少し笑った。

「仕事とはいえ、随分と刺激的な装いをされたようで。
 僕は、そういうお店にはあまり行ったことがない方でして」
「はぁ……」

 よく行かれてるほうが驚くので、それはそうだろう、と思う。諸伏さんは楽しそうに私の目を覗き込んで、綺麗な笑顔で笑った。

「僕もあなたに『接待』されたいです」
「……ふざけてます?」
「まさか」

 諸伏さんはにこやかに笑いながら車のドアを開けて私を助手席に座らせると、手荷物と一緒に私が抱えていた10センチのピンヒールを助手席のシート下に置いた。

「もしかして、他の人にできて、僕相手にはできないとでも仰りますか?」
「…………えっ。やきもちですか?」
「そうとも言います」

 驚きの声を上げた私に、諸伏さんは軽々と言うと「処方箋の内容をもらってきます」と私に車の鍵を渡し、院内の方へ戻って行った。
 諸伏さんがあんな風にヤキモチを焼くとは驚いた。私は受け取った車の鍵を手の中で弄びながら、さて諸伏さん相手のキャバクラ接待とは、何をしたら喜ばれるんだろうな、と考えた。考えて、頭を抱えた
 多分彼の、あのよくわからない漢文漢詩の引用にウェットに富んだいい感じの返しをしなければいけないのではないだろうか。
 ――要は諸伏高明にキャバ接待など、無理ゲーである。





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(囮捜査で際どい格好する夢ちゃんに嫉妬する高明)
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