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No.24

#名探偵コナン
赤井秀一✖️同僚女


 誰かを引き止めるとき、待てとか行くなとか。そういう言葉って多分有効な手段ではなくて、離れることができない理由を一つ作れば、それだけで事を為すのだ。
 それが彼の、赤井さんの場合は私の車のキーを盗って自分のポケットに入れてしまうとか、作成した書類データの入ったメモリを隠してしまうとかそういう子ども染みたものから、捜査の行き詰まりで困った私に状況打破の情報を持ってくるとか、ヘマをして追われた私を颯爽と迎えに来るとか。
 前者は意地悪しないでって言うしかないし、後者は口をへの字に曲げながらお礼を言うしかない。
 
 赤井さんが私なんかに構う理由はわかり切っていて、彼の昔の女に似ているからだ。日本人で、髪が長くて黒い。たったそれだけの理由で彼は私を眺めて頬に掛かった髪を払って微笑むので、男の人ってよくわからない、と思っている。

「そんなに似てます?」
「ウン?」
「あなたの死んだ恋人に」

 聞くと彼は、似てないよ、と決まって返して心外だと、私の髪を持ち上げて口付けようとするので、ここ職場、と言ってその手を払う。

「似てないなら、理由がないわ」
「恋に理由を求める方かい?」
「私じゃなくて、あなたが。そう見える」
「……成る程」

 理由もなく女に惚れる男だと、そんな風に赤井を見くびることができないことが、一番の私の失敗なのだろう。子どもみたいな意地悪をされることが、少し可愛く思えてた。捜査の行き詰まりに悩んでいるときに手を貸してくれて、嬉しかった。もう死ぬかもしれない、と思ったときに颯爽と彼が現れて、まるで、物語のヒーローのようだ、と思った。胸が高鳴って、気付いたら好きだ、と思ってしまっていた。

「始めは、そうだよ。似てると思って目で追った」
「…………」
「でもすぐに、似てないと気付いた。
 彼女はもっと表情豊かだったし、無邪気に見えた。俺は多分彼女のそういうところが好きだった」

 赤井の話を聞いて、自分でも思ってもみないほど胸が締め付けられた。見えない手に強く掴まれたようで、うまく息が吸えない。それでも私は彼から目を逸らさずに、赤井を見ていた。彼の緑の瞳も、同じく私を見ていた。

「君はそうして心を上手に隠すから、覗いてみたいと思ったんだ。今君は、俺の話を聞いて何を思った?」
「何って……」
「悔しい、苦しい、どうでもいい、何も感じていない。どれだ? なぁ、……わからないんだ。
 だからそれを、俺に教えて欲しい」

 私は……、と小さく呟いて、顔を俯けた。彼が、赤井の手のひらが髪に触れて、私はそれをもう跳ね除けることができない。

「教えてくれ」

 理由を、知った。
 多分私は、彼の好奇心を揺り起こしたのだ。緑の目で人の心の奥まで覗き込んでくる彼が、赤井さんが、その心の奥を俺に見せろと、少しだけ微笑んでいる。
 彼の瞳の奥の好奇心の獣が吠えている。




by request, Thank you!
(・明美さんの代わり(誤解)のつもりでいた気弱彼女が身を恋人に都合良く振る舞っていただけなのに、外堀埋め尽くされて容赦なく激重執着(ドロドロ溺愛)ぶつけられ離れられなくされる(逃げられない)話)
「明美さんの代わり」の部分くらいしかあまり添えませんでした…。すみません。

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