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- 五条弾とくのたまちゃん(13)
- 名探偵コナン(8)
- 呪術廻戦(8)
- 概要(1)
タグ「五条弾とくのたまちゃん」を含む投稿[13件](2ページ目)
#五条弾とくのたまちゃん
デフォ名垂れ流し 現パロ
01.レモングラス(風化/苦い/ギター)
多分、何にも知らないんだよね、と五条は彼女を後ろから抱き込みながら、小さく呟いた。
「ずっと昔から一緒にいた気になってて、俺は多分君のこと、あんまりたくさん知らないんだ」
「……そうですか?」
「うん。例えば目がいいとか悪いとか、君が数学は苦手なことは知ってるけど逆に昔から得意だった科目とか、ミヨシちゃんが俺といないときは何してるとか、そういうこと」
「……うーん、視力は悪くないほうです。あんまりゲームとかしないからじゃないのって昆奈門さんが。
得意な科目は、美術がずっと好きで美術館の目録とか眺めるのも好き。
五条さんと一緒にいないときは、昆奈門さんのお家で陣左さんとか尊奈門と一緒にいたり、昆奈門さんと出かけたり。お菓子作るのも、好き」
後ろから回された五条の腕に触れながら、彼女はちまちまと話した。まだ恥ずかしいのか、後ろから見ても耳が少しだけ、赤い。
「……知らなかった」
彼女の体を、肩を後ろから抱きしめて、首元に擦り付きながら言えば五条の膝の上に抱き上げられたままの彼女は、アワ…と小さな声で鳴いた。恥ずかしそうにする割に、逃げようともしない。
彼女はちまちまと五条の膝の上で自分の体の向きを変えて、少し落ち込んだように自分を見る、五条の目を覗き込んだ。
「……逆に五条さんはどうですか?」
「目はあんまりよくないからコンタクトしてるし、眼鏡もする。ゲームは時々、反屋たちとしてたかな……。
得意科目は、どうだろう。どれが飛び抜けて得意とか不得意とかがなかったかも。
ミヨシちゃんと一緒にいないときは、本を読んだり映画観たり、反屋と椎良と遊びに行ったりもするかも」
「あの……違ってるかもですけど、五条さん昔ギター触ってませんでしたか?」
「ギター?」
唐突に聞かれて、五条は怪訝に彼女を見た。ややあってから、そう言えば、高校生の頃の夏休みに反屋の父親が昔買ったというギターを見つけて、押都に少し教わりながら三人で交代して遊んでいたことがあったかもしれない、と思い出す。
そう話すと、彼女はやっぱり、とほんわり笑った。
「皆さんでハミングしながら弾いてたのを見かけて、なんか、いいなぁって」
「そう?」
「私の幼馴染は尊奈門だけですし、男と女なのでそこまでずっと一緒にはいなかったですし」
確かに彼女の言う通りで、彼女と尊奈門は幼馴染らしく気安く話しているし仲も良さそうだけど、べったりではない。そう思うと、自分と反屋と椎良と高坂の四人というのは、いつもべったり仲良しだったのだな、と思う。
「私は五条さんのこと、知ってることもあれば知らないこともあるし、これからもずっとたくさん知っていきたいです。
今までのことも、これからのことも」
「……うん」
そう言って、少し笑った彼女のほうが自分よりもずっと大人のように思えて、五条もなんだかつられて笑った。
好きなことも嫌いなことも、嬉しかったことも嫌だったことも、これからもずっとずっと二人でお喋りして、笑い合えたらいい。そう思っている。
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デフォ名垂れ流し 現パロ
01.レモングラス(風化/苦い/ギター)
多分、何にも知らないんだよね、と五条は彼女を後ろから抱き込みながら、小さく呟いた。
「ずっと昔から一緒にいた気になってて、俺は多分君のこと、あんまりたくさん知らないんだ」
「……そうですか?」
「うん。例えば目がいいとか悪いとか、君が数学は苦手なことは知ってるけど逆に昔から得意だった科目とか、ミヨシちゃんが俺といないときは何してるとか、そういうこと」
「……うーん、視力は悪くないほうです。あんまりゲームとかしないからじゃないのって昆奈門さんが。
得意な科目は、美術がずっと好きで美術館の目録とか眺めるのも好き。
五条さんと一緒にいないときは、昆奈門さんのお家で陣左さんとか尊奈門と一緒にいたり、昆奈門さんと出かけたり。お菓子作るのも、好き」
後ろから回された五条の腕に触れながら、彼女はちまちまと話した。まだ恥ずかしいのか、後ろから見ても耳が少しだけ、赤い。
「……知らなかった」
彼女の体を、肩を後ろから抱きしめて、首元に擦り付きながら言えば五条の膝の上に抱き上げられたままの彼女は、アワ…と小さな声で鳴いた。恥ずかしそうにする割に、逃げようともしない。
彼女はちまちまと五条の膝の上で自分の体の向きを変えて、少し落ち込んだように自分を見る、五条の目を覗き込んだ。
「……逆に五条さんはどうですか?」
「目はあんまりよくないからコンタクトしてるし、眼鏡もする。ゲームは時々、反屋たちとしてたかな……。
得意科目は、どうだろう。どれが飛び抜けて得意とか不得意とかがなかったかも。
ミヨシちゃんと一緒にいないときは、本を読んだり映画観たり、反屋と椎良と遊びに行ったりもするかも」
「あの……違ってるかもですけど、五条さん昔ギター触ってませんでしたか?」
「ギター?」
唐突に聞かれて、五条は怪訝に彼女を見た。ややあってから、そう言えば、高校生の頃の夏休みに反屋の父親が昔買ったというギターを見つけて、押都に少し教わりながら三人で交代して遊んでいたことがあったかもしれない、と思い出す。
そう話すと、彼女はやっぱり、とほんわり笑った。
「皆さんでハミングしながら弾いてたのを見かけて、なんか、いいなぁって」
「そう?」
「私の幼馴染は尊奈門だけですし、男と女なのでそこまでずっと一緒にはいなかったですし」
確かに彼女の言う通りで、彼女と尊奈門は幼馴染らしく気安く話しているし仲も良さそうだけど、べったりではない。そう思うと、自分と反屋と椎良と高坂の四人というのは、いつもべったり仲良しだったのだな、と思う。
「私は五条さんのこと、知ってることもあれば知らないこともあるし、これからもずっとたくさん知っていきたいです。
今までのことも、これからのことも」
「……うん」
そう言って、少し笑った彼女のほうが自分よりもずっと大人のように思えて、五条もなんだかつられて笑った。
好きなことも嫌いなことも、嬉しかったことも嫌だったことも、これからもずっとずっと二人でお喋りして、笑い合えたらいい。そう思っている。
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#五条弾とくのたまちゃん
すみません名前変換付けてないんで、デフォ名垂れ流してます。
支部投稿の「ビジネス」の後日談?
ミヨシちゃん、前髪伸びたね、と言って自分の家のテーブルに大学の課題を広げて睨めっこをしている彼女の、前髪を触った。
中指でそっとその髪を持ち上げて、耳にかけてやる。彼女は少し微笑んで、五条に目線を向けた。
「もう少ししたら、切りに行こうと思うんですけど」
「目に入ると、目が悪くなっちゃうよ。折角今、視力悪くないのに」
言うと彼女は、そうですね、と言って五条が触っているのと反対側の前髪を触った。切ろうかどうか、悩んでいるのだろう。
「俺でよければ前髪くらいなら、切ってあげられるよ。自分の前髪も切ってたし、高坂のも……、あ」
「陣左さんのも? どうかしましたか?」
「……いやちょっと、昔のことを思い出して」
何か覚えがある気がすると思ったら、昔にこうして高坂の前髪を触って、切ってあげるよ、などと言っていたことがあったのだ。あのときの五条と高坂は『只ならぬ関係』に見せるための、演技をしていた。
高坂に腰を抱かれていたし、キスもどきもしたし濡れ場もどきも演じた……、その時と同じような『恋人に触れるような』という動作で過去と全く同じことを彼女に対してもしてしまったことに、五条は一抹の申し訳なさを覚えた。
全くそんなわけはないのだが、少しだけ、浮気してしまったような気持ちになったのだ。何というか、本妻と浮気相手に同じプレゼントを渡すクズ男の気持ちである。
「……ごめんね、ミヨシちゃん」
「え、何がですか。……高坂さんの前髪切るの、失敗したんですか?」
「いやそういうわけじゃなくて」
ごめぇん……と呟きながら、五条はぐりぐりと彼女の肩に自分の頭を押し付けた。彼女は全く訳が分かっておらず、え、え、何がですか、あと五条さんちょっと重いですぅ……、とか言いながら、五条にぐりぐりと頭を押し付けられ、されるままになっている。
昔から、自分が恋人相手にする仕草には変わりがないということが、なんだかとても照れ臭くなってしまった五条さん、というわけである。
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すみません名前変換付けてないんで、デフォ名垂れ流してます。
支部投稿の「ビジネス」の後日談?
ミヨシちゃん、前髪伸びたね、と言って自分の家のテーブルに大学の課題を広げて睨めっこをしている彼女の、前髪を触った。
中指でそっとその髪を持ち上げて、耳にかけてやる。彼女は少し微笑んで、五条に目線を向けた。
「もう少ししたら、切りに行こうと思うんですけど」
「目に入ると、目が悪くなっちゃうよ。折角今、視力悪くないのに」
言うと彼女は、そうですね、と言って五条が触っているのと反対側の前髪を触った。切ろうかどうか、悩んでいるのだろう。
「俺でよければ前髪くらいなら、切ってあげられるよ。自分の前髪も切ってたし、高坂のも……、あ」
「陣左さんのも? どうかしましたか?」
「……いやちょっと、昔のことを思い出して」
何か覚えがある気がすると思ったら、昔にこうして高坂の前髪を触って、切ってあげるよ、などと言っていたことがあったのだ。あのときの五条と高坂は『只ならぬ関係』に見せるための、演技をしていた。
高坂に腰を抱かれていたし、キスもどきもしたし濡れ場もどきも演じた……、その時と同じような『恋人に触れるような』という動作で過去と全く同じことを彼女に対してもしてしまったことに、五条は一抹の申し訳なさを覚えた。
全くそんなわけはないのだが、少しだけ、浮気してしまったような気持ちになったのだ。何というか、本妻と浮気相手に同じプレゼントを渡すクズ男の気持ちである。
「……ごめんね、ミヨシちゃん」
「え、何がですか。……高坂さんの前髪切るの、失敗したんですか?」
「いやそういうわけじゃなくて」
ごめぇん……と呟きながら、五条はぐりぐりと彼女の肩に自分の頭を押し付けた。彼女は全く訳が分かっておらず、え、え、何がですか、あと五条さんちょっと重いですぅ……、とか言いながら、五条にぐりぐりと頭を押し付けられ、されるままになっている。
昔から、自分が恋人相手にする仕草には変わりがないということが、なんだかとても照れ臭くなってしまった五条さん、というわけである。
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デフォ名垂れ流し 現パロくのたま第一話と二話の間の話
02. 夜伽話のあとで(首ったけ/息抜き/海)
通夜の夜は、故人が満足に旅立ったというのなら尚更で少しだけ事務じみているくせに、それでもひそやかな非日常を内包して、切なくなる。
雑渡の大ばあちゃんと呼ばれた女傑は齢にして百手前の大往生となったが、彼女を悼むと同時に皆が薄っすらと子ども時代の思い出話に興じていて、今だけはこの村も村の住人たちも、過去に少し揺り戻されたようだった。
同じく駆けつけていた反屋や椎良と、また雑渡の車の運転手役として尊奈門と一緒に戻って来ていた高坂と合流をして、同じく広間の片隅でちびちびと飲みながら昔話をする。
そもそもこの村の人間は皆宵っ張りだし、こうして大ばあちゃんの家の座敷にばらばらと集まってだらだら飲み始めたのなら、今日は寝る気もないのだろう。これだけわやわやと人がいれば、線香の火が消える心配はないだろう、と奥の床の間に安置された故人を見ながら、思った。
「五条、お前、ミヨシに上着貸してた?」
そうして反屋たちと話していると、雑渡から声を掛けられた。喪主こそは雑渡の父が務めるようだが、村での葬式や通夜の手配などの差配は忙しい当主に代わって雑渡が担うようで、押都と山本を連れて忙しなくしていたはずだった。
「お疲れ様です。もう落ち着かれたんですか?」
「やっとね」
座敷の隅で車座になっていた五条達の横に座り込んで、雑渡は深々と溜息を落とす。飲みますか、と聞いた高坂にウンと返したので、机に適当に広げられた宴席からグラスを二つ、取って来た。押都もこちらに来るのが見えたのだ。
「で、五条。ミヨシが持ってるのは、お前の上着? うちの社名入りジャンバー」
「ああ」
四人でちびちび飲んでいた日本酒を五条が持ってきた硝子の小さなぐい飲みに反屋が注いで、二人に手渡す。
重ねて聞かれて、五条はそう言えば、貸しっぱなしだったと頷いた。
「そうですね、俺のです」
「一応聞くけど、なんで貸したの?」
「え、ああ。少し肌寒いって言ってたので、そのままで。
そもそも……SAでナンパされちゃって」
「は?」
『肌寒い』と言ったときは何も言わなかった雑渡が、『ナンパ』の単語を出した瞬間に押都と合わせてじろ、と五条を見た。
「え、ええ~。俺これ、叱られるやつですか……?」
「そうだね」
「え、エエエ~……」
「そもそもSAでナンパって何」
「いやちょと目を離した隙に……」
「なんで目ぇ離してるの」
「……五条。あの箱入りは、恐らくナンパなど人生で初めてであったろうなぁ」
「可哀想に。怖かっただろうねぇ。同行者がちゃんと見てないせいで」
「私達なら、そんな風に目を離したりしないぞ」
「え、え、エエエ~~~……」
矢継ぎ早に文句を言ってくる兄貴分二人の親馬鹿……もとい保護者馬鹿ぶりに、五条は若干引いて少し仰け反った。ふと気づけば近くにいたはずの反屋と椎良と高坂はもうおらず、いつの間にか少し向こうのテーブルの向こうから、「がんばれ」とでも言いたげに手を振られる。
「五条、聞いてンの」
「五条、聞いておるのか」
何この人ら、既にもしかしてべろべろ……?と思ったが猪口の中身は大して減っておらぬし、別に酒臭くもない。いかに自分たちがあのちいまい少女を大切にしてきたか、を語る二人のオッサンを眺めて、五条はもう一度内心で「エエエエエ~~~……」と困惑の声を上げた。
その後ようよう、明け方近くにオッサン二人の絡みから抜け出し、今後は絶対に安易に目を離してナンパなどさせないこと、ときつく言いつけられ、エ……何これだけ文句言ったくせにまだ次回あるんだ……、と再度五条を困惑させてから、雑渡と押都は葬式の準備のために戻っていった。
五条さんはこの時御存知なかったことだが、ミヨシちゃんはこの時既に五条のお兄さんに憧れとも恋とも言える気持ちを持っており、もちもちちまちま、恋する女の子の顔で五条さんを見ていたので、察した保護者二人が「まぁそんなに気に入ってるなら……」といった調子で、何か自分たちが対応できないような用事があれば、五条に行かせよう、ぐらいに思っていた。
それがまさかあんなことになるとは……、は雑渡の後の言である。
はてさて、兄貴分二人に激詰めされてぎゃいぎゃい言われた五条は、疲れた顔で反屋たちのところへ戻り、自分を見捨てた文句を幼馴染たちにぶちぶち言った。
「仕方ないだろ。あの人ら、スイッチ入るとねちっこいし」
「そうそう」
反屋と椎良に言われて、それもそうだけど……、と疲れて項垂れる。高坂は「お二人ともあの小娘を可愛がってらっしゃるから……」と五条に少し同情的なようだった。
高坂曰く、というか高坂が聞いてきたお二人の言曰く、「女の子の可愛さは男の子の可愛さと別物」らしく、尊奈門とは別方向から彼女を猫っ可愛がりすることが楽しくて仕方ないらしい。
そんなもんか、と四人で言い合いながら、ちょっとトイレ、と言って五条は宴席から抜けた。別宅と言えど、雑渡の家は広い。お手洗いを借りて戻ってくると、その途中で少しだけ障子の開いた部屋があった。なんで開いているんだろう、不用心な……と思ってその部屋を覗き込むと、部屋の中ではすよすよと寝息を立てて眠っている。件のミヨシがいた。
なんでこんなところで、と思ったが確かに宴席にはいなかったし、高校生の彼女には長時間移動の疲れもあったのだろう。障子は閉めておいてやろう、と思ったがふと、彼女の近くに見覚えのあるジャンパーの生地が見えた。
雑渡と押都からの激詰めの原因になった、彼女に貸したままの社名入りのダサいジャンパーである。
回収しておこうと、五条はそっと部屋の中に入った。彼女のあえかな、寝息だけがしている。素面であれは眠っている女の子のいる部屋に入ったりなどしなかっただろうが、残念ながら五条さんは今少々、酔っぱらっていらっしゃる。
彼の人生における、これは一度目の酒によるやらかしであった。二度目は言うまでもなく、酔っ払いのやらかしスケベの件であるが、実は一度目はここであった。
すよすよと寝ている彼女に近づき、そっとジャンパーを取り上げようとする。どうも布団近くにあるようで、どうしてだ? とは思っていた。
抱きしめるように、彼女は眠っていた。
「………………、え」
小さくだが、声が漏れる。
彼女の頬には、泣いた跡があった。そしてギュウと五条のジャンパーに縋るようにして、あどけない寝顔で眠っている。どうして自分のジャンパーを、とか、泣きながら寝たのか可哀想に、とか。
幾らかの感情が彼女の寝顔を見ながら綯交ぜになって、ただ、涙の跡に彼女の柔らかくつるつるした髪が、張り付いてしまっていた。
そっとしゃがみ込んでその髪を払ってやると、彼女はン、と小さく呻く。指先で少しだけ触れた頬は柔くてすべすべとしていた。言う通り、可愛い女の子なのである。
可哀想な涙の跡を、五条は親指でそっと拭った。そんなに泣かないでよ、と思っている。少しだけ彼女の寝顔を眺めてから、回収できそうにないジャンパーを見て諦めて、五条は部屋を後にした。ぴっちりと障子を閉めて、大きく溜息を落とす。
ずくずくと、心臓が疼いていた。きっと幼い彼女に他意などないのだろう、と言い聞かせる。でもどうして、俺の服を抱きしめるみたいに縋るみたいに、抱き込んで寝てしまったのさ、を彼女に聞いてみたい気がしていた。
気がしていただけに、したかった。
その後、彼女から返してもらったジャンパーからは、彼女自身の何やら花みたいな匂いがして、あんな風に寝ていたなら当たり前か、と申し訳なさそうな顔をする彼女を見て思った。
気にしてないよ、大丈夫だよ、という台詞はいつも、五条の、彼女へのお兄さん染みた笑みと一緒に告げられる。
気にしているし、大丈夫ではなかった。
五条の心も気持ちも、全然大丈夫じゃなかった。その時も、その後でも。
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