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No.20

#五条弾とくのたまちゃん
デフォ名垂れ流し

05. マイ・ディアー(りんかく/コップ/メロウ)

 『マウント野郎』と彼女の大学サークルで呼ばれている五条さんは呼び名の通り、彼女の背後にいる男の気配を滲ませるために、彼女に自分の私物を持たせることが大好きなマウント野郎である。
 明らかに男物である私物が持たせられるのであれば、別に時計でも他のアクセサリーなどでも何でもいいのだが、彼女の細っこい腕に自分の時計はごつくてブカブカだろうし、他のアクセサリーも場合によってはありだがパッと見で男物とわかり難い。
 なので一番手軽なのは、羽織り物や上着などをぶかぶかと彼女に着てもらう。それが一番男物だと見て取りやすく、身に着けてもらいやすい、という結論に五条さんは至られた。
 
 問題は彼女は元々可愛い系の格好が多いので、男物の服を着てもらうにも少し服の組み合わせを考えなければならず、そもそも彼女は衣服への興味が薄い。
 よく可愛いひらひらした服を着ていることが多かったので、そういう服が好みなのかと思ってそれとなく聞いたら、押都さんに選んでもらったんですぅ…、と言われたときの衝撃ときたら。えっ、何で押都さんミヨシちゃんの服選んでるのズルい、と、えっ押都さんこういうひらひらした服好きなのかわかるけども…みたいな衝撃が頭を駆け巡って、少し宇宙猫してしまったので彼女に変な顔をされた。
 ともかく、彼女はとても服への興味が薄いので五条のシャツをそのまま羽織って適当な、それこそTシャツとジーパンで出かけようとするし、それも可愛いけどでも違うんだよ…!と、五条は思っている。
 めちゃくちゃとんでもなく可愛い格好で、バチバチ男受けする清楚でかわちい服を着ているのに、なのにガンガンに男の気配がするのがいいんだ!!わかるか?!? と思っているので、自分の服を着てもらうときは五条がコーデを考えることにした。
 正直楽しい。押都と雑渡が彼女を連れて服を買いに行くのが好きな理由がわかる。羨ましい。

 というわけで本日のミヨシちゃんコーデである。ブカめシャツを羽織ってもらうので、女の子らしさを際立たせるにはウエストマークが望ましい。
 本当はショートパンツにその太腿を隠すような男物のシャツの着方が一番かわいいと思っているけど、無駄に太腿の露出をさせるのも嫌なので、今日は膝上丈の黒っぽいボックススカートに五条が学生時代によく着ていた変な柄のシャツがあったので、それ。
 ボックススカートの上のインナーのカットソーはタックインをしてウエストの細さと華奢さを際立たせてから、ダボついたシャツを羽織って一連の細いバングルを腕につけてもらって、五条は満足して頷いた。

「今日もかわいい。五条さん、ありがとうございます」

 彼女がにこにことお礼を言って、洗面所の方へ化粧と髪をやるために消えていく。髪はポニーテールがいいな、と思っていたら洗面所から戻ってきた彼女は五条のご希望なんかお見通しなのか、ゆらゆら揺れるポニーテールだった。

「かわいいね」
「五条さんがお洋服選ぶの上手だから」

 ポニーテールの先の髪に指を絡めながら言った五条に、彼女は少し恥ずかしそうにはにかんで答えて、そっと笑った。休み明けのこの笑顔と楽しみがあるから、一週間の始まりでも頑張れる気がしている。
 そんな五条さんが髪まで含めてトータルだよね、と女の子のヘアアレンジまで習得し始めるのは、この一カ月後のことである。
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