前回読んだ位置に戻りますか?

この先、性的表現を含みます。高校生を含む18歳未満の閲覧は固くお断りしています。
あなたは18歳以上ですか?

ワカメっぽい🌇忍さんに頭巾を返すのに、無くさないように首巻にしてるんだ


=== ここから クソ雑導入RTA ===


 朝起きたら熱はスッカリ下がっていた上に、枕元には何やら包みが…? なんだろうと思って広げたら、甘そうな枇杷だった!
 「よければどうぞ」という簡潔な書き付けしかなかったが、これはもしかしてこの間のタソガレドキさんからのお見舞いなんだろうか…。来たなら起こしてくれればいいのにな、と思いながらその枇杷を見つめていると、伊作と共に彼女の様子を見に来た用具委員会委員長の食満にその枇杷が見つかってしまった!
 小松田さんの話では、昨夜忍んできたタソガレドキの忍びがいたらしい。
 そんなものを食べるなんてとんでもない!と過保護を発揮する食満! そんな危ない人じゃなかった折角くれたのに申し訳ないと抵抗する夢主氏!!
 伊作は二人のそんな喧嘩を見て、ふかぶかと呆れたため息を落とすのだった……。

=== クソ雑導入RTA ここまで ===





 ちゅむ、ちゅむ、と熟れて舌の上で溶けるほどになった枇杷を食む。
 枇杷は見た目通りとても甘くて、彼女は少しずつそれを食べていたのだが、さすがに元々熟れていただけあって、すぐにグスグスに実が溶けていってしまった。
 大事にし過ぎて腐らせてしまっては、それこそ申し訳ない。食満に見つかってから枇杷の処遇について、六年生の先輩たちと大喧嘩をしたのだが、結局彼女が枇杷を抱え込んで籠城(亀)したこともあり、伊作の「別にそんな変なことをする人たちじゃないよ」とか「良からぬ企てで忍び込んでいる様子ではありませんでしたし……」とかいう新野の取りなしもあり、晴れて彼女のものとなった。
 
 そもそも、新野たち教師と小松田はそのタソガレドキ忍者が忍んできたことに気づいていたのに、六年生の面々は気づいていなかったのである。気づいた側の新野が「大丈夫」と言うのだから、彼らにはもうその枇杷の処遇について口を挟む権利はないのであった。
 しかし、六年の兄さんたちは伊作を除いてそのタソガレドキ忍者へ並々ならぬ敵対心と警戒心を待っているため、おいそれとその辺でちゅむ、ちゅむ、と枇杷を食べているわけにはいかない。
 枇杷のことを直接は言わないでも、特に潮江と食満が色々な理由をつけて枇杷を駄目にしようとするからだ。彼らにしてみれば、かわいい妹がタチの悪そうなタソガレドキのよくわからん忍者に目をつけられた!という一大事なのだが、兄の心を妹は知らずである。
 なんでそんな六年生から妹みたいに思われてるかって? 知らんこれはクソ甘夢小説だ、考えるなユメジョの本能だ感じろ。

 まあそういうわけで、彼女は学園の庭の片隅で、ちゅむ、ちゅむ、と残り少ない枇杷を食んで、そのタソガレドキ忍者のことを考えていた。
 名前も知らない彼はあれから一週間経っても会えることがなく、保健室に来ていた組頭さんに聞くと「あ〜、ごめんねぇ、今ちょっと使い物にならなくなっててねぇ〜」などと呑気な口調で言われた。
 体調が悪いのか、まさか自分の風邪を移してしまったのか、と思ったが、そういう訳ではないらしい。
 彼女は存じないことだが、五条はあの後よろよろヨボヨボと夜半すぎにタソガレドキ城に戻り、翌日には押都に頭巾の紛失届を出して叱られたわけだが、どうにも様子がおかしく、仕事はしっかりとしているがそれ以外の時間は酷くぼんやりしている。
 心配した同僚の反屋が話を聞いたようだが、「頭巾が……」と一言呟いたきりで、何もそれ以上話さなかったそうである。
 
 顛末をご存知の雑渡と山本はもーう、ニヤニヤが止まらなかった。
 ワっカル〜、可愛いよね、びっくりしちゃうよね!女の子が自分の貸した頭巾を大事そうに擦り寄って寝てるんだもんね!!イヤァ、酒がうまい!!!若者の恋バナ最高!!!!のテンションであった。完全にポップコーン出してきて鑑賞の体勢に入った、嫌な大人どもである。
 そして当該情報のご周知をされた押都は、二人の悪趣味にちょっと引いたし五条のクソ駄目ぶりも心配はしたのだが、まあ五条も一応大人だし……と傍観の姿勢に入った。せめて組頭のニヤニヤを止めてやってください小頭。

 そんなこんなで例のタソガレドキ忍者は一週間いまいち使い物にならず、ぼんやりとして過ごしていたわけだが、流石に次の刺激が欲しくなった…もとい見かねた組頭によって、忍術学園へお使いに出された。
 直属上司の押都としても、仕事はするとはいえいつまでもボケボケした態度では困るため、まあ何か変化があるなら…と許可を出した。のが本日の話題である。
 
 ちゅむ、ちゅむ、と学園の庭の端っこのほうで枇杷を食べていた彼女は、近くの塀を乗り越えて入ってきた黒っぽい人影に目を向け、その大きな瞳を溢れんばかりに丸くした。

「あ……」
「あ、タソガレドキさん!」

 ここから侵入したら彼女がいたのは、もちろん嫌な大人の組頭と狼隊小頭の陰謀である。そこの木の上からポップコーン抱えてみてるし。
 五条としては、「やられた!」という内心であったが、流石に目の前のいたいけな少女にその「クソどもが!!」の心情をぶつけるほど子どもではない。五条はどうにか澄ました顔を取り繕うと、「お加減はいかがですか?」と大人のお兄ちゃんの表情で聞いた。

「もうお熱も引きました! あの枇杷、ありがとうございました!
 とても甘くておいしかったです」
「それはよかった」

 こちらへ駆け寄って来た彼女の手には、その件の枇杷がある。包みの中に入っているのは最後の一つのようだが、気に入ってもらえたようでよかった、と五条は素直に思った。

「今日は学園長の大川様にお届け物なのですが、どちらのいらっしゃるか、御存知ですか?」
「学園長先生ですか? 多分、庵の中にいらっしゃると思います」

 彼女はそう言って、庭先を先に立って歩き始めた。どうやら案内までしてくれるようである。

「タソガレドキさんは、あの後お加減が悪かったと聞きましたが、私の風邪など移していませんでしたか?」
「ああいえ、問題ありません。その…加減が悪いというのは、そういうことではなく」

 組頭はいつの間に何を喋ったのだろうか。五条は思ってデカデカとため息を落とそうとしたが、ふと先を行く彼女が首元に見覚えのある布を巻いているのを見つける。

「あの、その首の……」
「ああ、忘れていました!」

 彼女は大げさに言って、飛び跳ねる。わたわたと首元からその布を取り外すと、手元できれいに折り畳み五条のほうへ差し出した。

「お借りしていた頭巾です。私は忘れっぽいので、こうして見えるところに身に付けていたらお返しするのも忘れないと思って。
 あのときは助けていただき、ありがとうございました」

 そう言って少女はふかぶかと頭を下げ、五条にその頭巾を差し出した。先ほどまではそのタソガレドキ忍軍の灰赤色の頭巾が首元に巻かれていたから気にならなかったが、少女の首は折れそうなほどに細い。
 なかなか頭巾を受け取らない五条を、彼女は顔を上げて不思議そうに見た。

「……すみません、無くしたと思って、その頭巾は既に紛失届を出してしまったのです」
「えっ、ごめんなさい。私がなかなか返さなかったから……」
「いいんです、それにもう既に次の支給品がありますから。
 だからよければ、その頭巾はあなたが使ってください」

 そう言うと五条は、彼女の手からその頭巾と取り上げて、もう一度彼女の首に巻いた。彼女は首も肩もどうにも細っこくて、こういう忍者の切った張ったのある日常では、その首がすぐにでも折れてしまうのではないか。そんな風に思って、五条はどうにも彼女の首筋を直視するのが怖くなったのである。
 頭巾を巻かれた彼女は、きょとんとした顔で五条を見上げてから、それからぽん、と大きな花が咲くように破顔した。

「ありがとうございます! とても嬉しいです!」

 彼女はそう言って、「温かい」と首元の五条の頭巾に顔を埋める。なんとなく、組頭が「忍たまは可能性だよ」と言って学園に通って友好的であることの意味が、少しだけわかる気がした。
 この年端もない少女が、どうにか健やかに生きてくれたらいい。にこにこと笑って、五条を誘って庭を歩いていく彼女の小さな背中を見ながら、五条は思った。

「そういえば、お兄さん。お名前教えてください!」
「……五条です。五条弾」

 ふふ、五条さん、と呼ばれて顔を綻ばせる五条は知らない。
 頭上の木にはポップコーン組と合わせて押都も忍んでおり、衒いなく何も考えず少女の無垢な笑顔に絆され流されて名前を教えてしまった五条の査定書に、押都が大きくペケを付けたことを。
 年下の女の子があまりに可愛くて守ってあげたい存在すぎて、ハムスターを愛でてるお兄さんの心地になってる五条の顔がド甘くて、ポップコーン組がバカ笑いしていることを。

 そう、彼女は十四歳のかわちい女の子と言えど、――くのたま。
 大人たちがこのままハムスターとお兄さんのままではいかないだろうと察した通り、とんでもねぇ爆弾を持って、彼女は次回五条の「ハムスターかわいい」に浮かれた頭をぶん殴ることになるのである。






次回!
「五条さん助けてください! 口吸いの訓練をしろって課題が出たんですぅ(泣)」
「エ゙」
の段!
(ほんまに????)






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