いつかパラソルの下で
「うっわ。何すかその顔」
流川の顔を見て、開口一番に紺はそう言い放っていた。
「何でもねー」
ぶすりとむくれて流川は背を向ける。いや、何でもないことはないだろうよ。紺は心のうちで言い返す。口に出さなかったのは、出していたら殴られそうだったからだ。現に、口に出した花道は顔面にボールをぶつけられている。
「……ホントにあの人がキャプテンでいいんすか」
当の本人には聞こえない程度の声量で言うと、近くにいた晴子には聞こえたらしい。「ケンカしたらしいの」と晴子もまた、ひそひそと小さな声で返した。
「ケンカ?インハイ予選も近いっつーのに」
紺はぎゅっと眉根を寄せた。先日紺は、倉庫の中で、真っ二つに折れたモップを見つけた。モップの先端には乾いて黒ずんだ血がついていた。驚いて聞くと、二人のマネージャーは、二年前の体育館襲撃事件の顛末を教えてくれた。そして紺は流川に呆れ返ったのだ。あの冷然とした顔立ちと裏腹に、流川はどうにも手が出るのが早い男であるらしい。それも様々な意味で。または堪え性がないとも言う。
ホントに、そんな男がキャプテンでいいのか。紺は再び湘北バスケ部の未来を危惧した。そのうち、傷害事件で出場停止になるのではないか。
「ケンカって言ってもね、あの、雪ちゃんと……」
途方に暮れていた紺に、晴子が言いづらそうに付け足した。雪と?そう言われれば、今日は雪の姿が見えない。随分荒れたプレイをする流川に、「なるほどねえ」と紺は口の端を歪めた。
「じゃあ、あの頬骨の青タンは雪さんがやったってことっすか?」
「うん、たぶん……」
困ったように眉尻を下げる晴子とは裏腹に、紺は「すっげえ」と小さな声で感嘆していた。やっぱり、あの人、かっこよすぎ。
「その雪さんはどこにいるんです?いつも一緒にお昼食べてるのに」
「流川君の顔が見たくないから、今日は一緒に食べないって言って、行っちゃったわ。多分、水戸君のとこ」
「徹底してますね」
「そうなの、徹底してるのよ」
心底困ったように晴子はため息を吐く。肩を落とすとはこういうことなのだ、というお手本のように、がっくりと肩を落とした。オレも、今日は水戸さんのところにエスケープしようかな。いつもの五割り増しで目つきが鋭い流川を見て、紺は思った。
ぶすっとむくれた様子で本のページを捲っている雪に目線を落として、洋平はため息を吐いた。生温いイチゴオレを啜る。雪が買ったものだが、「やっぱりいらない」とわがままを抜かされたので、仕方がなく洋平が啜っている。ひどく甘かった。
「おい、雪。少しでいいからもの食えよ」
「やだ」
洋平を見もせずに雪は言う。洋平は再び嘆息した。最近は、ちょっとは食べるようになっていたのに。困ったもんだ。そう思って、思考が丸っきり彼女の保護者の視点であることに頭を痛める。オレ、まだ十八のはずなのになあ。
「せめて本から目を離せ。今日一日中読んでるだろ」
「同じこと、洋平まで言わないでよ」
なるほど、それがケンカの原因かと洋平は合点した。多分、流川は今自分が言ったのよりも、もう少し深いところまで踏み込んだのだ。だから雪にあんな風に殴られた。踏み込めるのがすごい、と洋平は感心する。例え流川と同じ立場にいようと、洋平だったらそこまで踏み込まないだろう。だから彼女に選ばれなかったのかもしれない。
フェンスに背を預けてずるずると雪の隣に座り込む。五月の屋上は、少し日差しが強すぎて暑い。生温く吹く風が、ひどく甘かった。春は嫌いだと洋平は思う。色彩も空気も事なかれ的な喋り方も、すべてが甘すぎるのだ。まるで、このイチゴオレのように。やっと空になった容器をコンクリートの地面に置くと、コンと空虚な音がした。洋平は甘いものが嫌いだった。
「そんなにむかつくんなら、別れちまえば?」
雪が苛立っているのは明白だった。心なし言動が刺々しいし、目の下には薄っすらと隈が浮いて見える。食事をしようとしない。わかりやすいのだ。この怜悧な女はその頭脳に似合わず、案外。洋平はそういう雪を可愛いとも思うし、同時に愚かだとも思っていた。
「むかついたんだろ?そうやって、無遠慮に踏み込まれて」
「そう言うあんたも、大概無遠慮だけどね」
本に目を落としたままでも、素早く切り返す雪に洋平は苦笑した。ページを捲る手は振りではなく、本当に読んでいるのだからすごい。洋平は喉の奥を鳴らして笑った。それでも雪は顔を上げない。そして洋平に誤魔化しは効かない。
「無遠慮ついでに言うさ。なあ。別れちまえよ」
「洋平、『余計なお世話』って言葉、知らない?」
「まさか。三バカトリオじゃあるまいし」
そう返すと、「そうだね、その通りだね」と雪が酷薄に笑った。今頃あいつらは、揃ってくしゃみでもしているかもしれない。
「……で。『余計なお世話』という言葉も知ってるはずの、決してお馬鹿じゃない洋平君は、何が言いたいわけ?」
雪がやっと本から顔を上げて聞く。歪められた口元は、昔の雪に酷似していた。怒ると彼女は今でもこうなるらしい。
「流川と別れてオレと付き合わねえ?」
それは痛烈な皮肉だった。洋平は甘いものが嫌いなのだ。
パァンと屋上に響いた音に、紺は首を竦めた。雪がまるで鬼のような顔をしてこちらを振り向く。げ。そうっと屋上の入り口から脇にどいて、彼女の動向を注視する。対して雪のほうは、紺など見えていないかのように無視して屋上から出て行ってしまった。「怖っえー」。雪の背中が見えなくなってから思わず呟くと、「そうだろ」と笑い混じりの声で洋平が言った。雪に殴られた頬を押さえている。ものすごく、痛そうだ。
「何やったんすか、水戸さん」
「ん?いや、ちょっとからかっただけ」
「からかって怒らせたってレベルじゃなかったっすよ。雪さんの顔」
「あいつ、怒ると怖えーだろ?昔はああいう顔してよくケンカに行ったもんさ」
洋平は頬を押さえたまま苦笑する。赤くなった頬とは裏腹に、太平楽な洋平の態度に、紺は不信感を覚えた。まさか。いやでもまさか。いやいやでもまさか。
「……水戸さん、もしかして、わざと怒らせたんですか?」
「いや。怒らせようとしてやったんじゃあねーけど、怒ることは何となく予想ついてたかな」
「なんでわざわざそんなことするんすかあ!」
紺は頭を抱えて叫んだ。
「体育館で、流川さんもひどいことになってたんすよ。機嫌が」
「だろうな。あいつ雪にベタ惚れだもん」
「……ですよね。丸っきり弟扱いしかされてないオレにも、嫉妬丸出しですもん」
紺が言うと、洋平はけたけたと声を上げて笑った。「大人げねーなあ、あいつ」。紺もその通りだと思う。その間も洋平はずっと笑っていた。青い空を仰いだ首筋に、喉仏がくっきりと浮き出ている。「多分流川はさ、」。やっと笑うのをやめた洋平が目尻に浮いた涙を拭いながら言った。
「雪が妙にお前のこと気にするから、気が気じゃねえんだろうな。雪って、あんまり人のことを気にする性質じゃねえから」
「そうなんすか?」
紺は驚いて聞き返した。とてもそうは思えない。マネージャーとして部員のサポートをしている雪はとても気が利いていて、すごく人のことを気にかけることができる人なんだなと思っていたのに。紺が湘北に入学するのを決めた、あの冬のことも含めて。
「勘が悪いほうじゃないから、マネージャーも何とか様になってるだけで、本当はすごく狭い範囲でしかものを見てねーんだよ。雪は。狭い範囲ってのは、仲のいい奴らってことな」
それなら、なぜ自分のことを、雪は気にかけてくれたのだろう。紺は不思議に思った。今はともかく、冬のあのときは出会ったばかりで、バスケットにあまり興味のなさそうな雪は自分の顔さえ知らなかったというのに。
「お前はある意味、特別だったんだ」
考え込んでいた紺に、洋平が言った。
「似てるんだ、お前は雪と」
「雪さんと?」
さらに不可思議になって、紺は首を傾げた。「外見がとかじゃねえよ」。洋平が苦笑して言う。
「そういう、身内にコンプレックスを持ってるところとか、自分に自信がなさそうなところとか」
自分の内面をずばずばと言い当てられて、紺は狼狽した。「雪さんから聞いたんすか?!」。驚いて言った紺に、「そういう奴じゃねえだろ」と洋平がまた笑う。
「お前、わかりやすいもん。兄貴と比較されるのが嫌で、兄貴を越えたくて流川のところに来たんだろ?」
その通りだった。完璧すぎて紺は、弁明することもままならず頷いた。
洋平は背中を預けていたフェンスから立ち上がって、ゆっくりと紺の横を通り過ぎた。少しいったところで立ち止まって、制服のポケットから煙草の箱を取り出す。白地に深緑で模様が描かれたパッケージで、紺には見覚えのないものだった。洋平が先に火を点けると、瞬間香水のような甘い香りが匂い立った。
「雪もさ、比較されるというか、同一視されることが多かったんだよ。あいつの母親と」
「お母さんと、ですか?」
ふっと白い息を吐いて言った洋平に、紺は鸚鵡返しに聞き返した。「これ以上はナイショ」。洋平が人差し指を口に当てていう。ひどく様になる仕草だった。
「つまり、お前のことが放っておけなかったんだなあ、雪は。お前が抱えてた問題のせいで、一気に雪の狭い枠の中に入っちまったんだ。流川がその枠の中に入るのに、すげー苦労したってのに、お前はほんの二三日で」
「それで恨まれるのって、すごく理不尽な気がするんっすけど」
「だから言ってんだ。流川も大人げねーなって」
ひやりと生温かった空気が冷えた気がした。太陽が雲に隠れたからだろうか。少し周りが薄暗くなる。紺は無意識のうちに、一歩後退りしていた。
「結局雪が選んだのは流川だってのに、全部独占しなきゃ、気が済まないらしいから」
バカだよなあと言って、洋平は笑った。紺はほっと息を吐いて、後退りした足を止める。洋平の手の中の煙草は大分短くなってきていた。熱くないのかな。フィルターを吸う洋平を見て、紺は思う。
吐かれた白い煙は柔らかい風に流されて、ゆるゆると洋平の後ろへ流れていく。不意に紺は聞いてみたくなって、口を開いた。
「甘いもの好きなんっすか?」
洋平はきょとんと少し首を傾げて、それからくつくつと喉の奥を鳴らして笑った。ほろりと煙草の先端から灰が落ちる。何となく舐めたら甘そうだ、と紺は思った。紺の足元にはイチゴオレのパックが転がっている。中身は空だった。
「大嫌いだ。特に、雪みたいな甘さは」
口元は笑っているのに、目は笑っていない。少し冷たい風がざあと吹いて、洋平の手から溢れる煙を攫っていってしまった。甘い香りが消えても、空気はまだどこか甘かった。
「……雪さんのこと、嫌いなんすか?」
紺は勇気を振り絞って聞く。そんな紺に洋平は小さく微笑んで、指から短くなった煙草を落下させた。ぐりぐりと足で踏み潰す。紺はもう一度後退りした。またも無意識のうちに。途方もない恐怖を感じたのだ。
「いいや。その反対」
洋平は悲しそうに笑った。
桜木花道は階段を上りながら、ぴゅうぴゅうと口笛を吹いた。最近、テレビのCMなどでよく聞く曲。手を離さないで、誰も触れない二人だけの国。そんなものは有り得ないとわかりきっているけれど、それでも憧れてしまう。
ふんふんと機嫌よく階段を上りきって廊下を曲がろうとしたところで、ドンと何かが胸の辺りにぶつかった。「った」。小さな声が下から聞こえてくる。どうも聞き覚えのある声だと思ったら、雪だった。
「びっくりした、花道か」
「サボりか、雪」
「うん。授業出る気しないから」
ふうんと息を溢して、数秒考えたあと、花道もくるりと踵を返した。
「やっぱ、オレもサボる。小池、何言ってんのかまったくわかんねーし」
「あの先生も災難だよね。三年連続であんたらの教科担なんて」
首を竦めて雪は息を吐いた。もう授業は始まっているので、廊下には人気がない。教師の滔々とした声が閉められた扉の隙間から流れてくる。水のように。花道は再び階段と向かい合い、どちらに行くのかと雪を見た。
「屋上か?」
「ううん。部室にしよう」
迷いなく雪は言う。屋上に何かあるのだろうなと思ったが、花道は言わなかった。肩を並べて階段を降りる。そういえば、雪と二人並んで歩くのは、随分久しぶりのことだった。
「チュウが、おめーの作る鍋食いたいつってたぞ」
「そういや最近一緒に食べてないもんね。でも、今更鍋?」
「窓開けときゃー食えんだろ」
「いや、そういう問題じゃなくてさ」
少し首を傾げて雪が笑う。自然に作られる表情に、言葉に、仕草に、花道はひどく安堵した。よかった、吹っ切れたんだな。花道は雪が、無理をして男っぽい言葉遣いや仕草をするのを知っていた。それは無意識下で始まったことで、彼女自身その事実に気づいたのは、つい最近だろう。けれどもう随分前から、花道はそのことに気づいていた。その原因の一端が自分にあると気づく前から。手を伸ばして、雪の頭をくしゃりと撫でてやる。「何すんの」。雪は非難がましい口調で言ったが、目は笑っていた。
「昔は、背なんて変わらなかったのにね」
雪が花道に向かって手を伸ばす。けれどその手は花道の喉の辺りまでしか届かず、雪は少し口を尖らせて腕を下ろした。花道は今、身長が百九十四ある。一年生の夏からまだ五センチほど伸びたのだ。
「よく一センチ二センチの違いで騒いだよね」
「おめー、負けず嫌いだもんな」
「あんたに言われたくないよ」
目尻を細めて雪が笑う。昔はこんな笑い方などできなかった。花道ではさせることができなかったのだ。そのことにほんの少し嫉妬する。全く以って勝手な話だ。最初に彼女を拒絶したのは、花道のほうであったのに。
制服のポケットの中から鍵を取り出して、雪は部室のドアを開けた。こもった臭いが鼻孔を刺す。「くっさ!」と雪は鼻を押さえた。
「あんたら、こないだ掃除したばっかじゃん。なんでこんなすぐに汚せるの」
雪は言いながら奥まで進んでいって、がらりと窓を開ける。入ってきた風は清潔だった。花道は「まーな」と笑ってベンチに腰掛け、横にあった週バスを開く。「まあなじゃない」と言って雪に殴られた。
「あーもう。掃除するよ」
週バスに目を落としていた花道は、掃除道具入れを開けてがさがさやっている雪をちらりと見た。スカートの中からにゅっと伸びる足や束ねた髪の下から覗くうなじ、首筋は昔と変わらず細く頼りない。花道が力を込めれば、ぽきりと折れてしまいそうだ。昔はそんなことは思わなかったのだから、変わったのは雪ではなく花道のほうなのだろう。
「ちょっと。このエロ本誰のだよ」
「あー、タガのじゃねーの」
「いい加減なこと言うな。多賀谷君こんなの持ってこないよ」
二年生のセンターである多賀谷の名前を適当に出すと、案の定見抜かれた。出した名前が悪かったと花道は後悔した。「そんなのわかんねえだろ」と花道が雪に言い返せないほど、多賀谷は温和でおっとりとした大人しい性格の持ち主だった。が、人のいうことは何でもはいはいと聞く癖があるから、「おめーのだよな」と花道が詰め寄ったら多分「はい」というだろう。
「まったくもー」
ぶつぶつと文句を言いながら、雪は散乱した雑誌をまとめて紐で縛っていく。花道はその辺りに落ちている雑誌に、つまりエロ本に特に興味はなかったので、何も言わなかった。だから後で悲鳴を上げるものが出るかもしれない。一年と二年の中から。
雪は臭い臭い汚いと文句を言いながら、使用済みのタオルやらTシャツやらを床から拾い上げて、洗濯籠の中に放り込んでいく。雪はこういうところが妙に所帯臭くていいと思う。案外料理が上手だったり、掃除や洗濯が得意だったり。それは彼女が幼い頃から一人ぼっちで過ごしてきたことの裏返しでもあったのだが。
「なあ。おじさんって、まだ帰ってこねえのか?」
「まだっつーか、多分一生帰ってこないよ、きっと」
ロッカーの上に降り積もった埃をぱたぱたと雪がハタキで叩き落す。はらはらと綿埃は舞って、陽光に輝くぼたん雪のようだった。随分汚い。
「おめーはどうすんだよ、高校卒業したら」
ふと不思議に思って花道は聞いてみた。雪は早く独り立ちしたがっていたから、高校を卒業したら就職するというかもしれない。けれどそれは、彼女が持っている頭脳からすればもったいない話だ。医者だって何にだってなれるのに。
花道が聞くと雪は不意にハタキをかける手を止めて、俯いた。逡巡するように沈黙する。予想外の反応に、花道は雑誌の記事から顔を上げて雪を見た。振り向かないので、背中しか見えない。
「……アメリカに行く」
そう言った雪の声は、かわいそうなほど震えていた。それは、十年近く前に、同じ台詞を雪の口から聞いたのと酷似していた。そのときも花道はすぐに反応できなかった。何秒も費やして言葉の意味を考え、反問してそれからやっと口を開くことができる。
「……どういうことだよ」
何秒かの沈黙の後、ようやく花道は声を絞り出した。雪は決してこちらを振り向かなかった。膝の上の週バスを閉じて横に置く。背中を向けたままで雪は言った。
「こっちに戻ってきたのが、元々そういう約束だったの。高校を卒業するまででいいから、花道の側にいさせてって。卒業したらアメリカに戻って、父さんの言うように働くから、だからって」
苦しかったの、と雪は息を吐いた。花道に背中を向けたままで、ぎゅっと両腕を抱きしめる。花道は雪に手を伸ばそうとしてやめた。今の雪に触れていいのは、花道ではなかった。
「すごく苦しかった。一人ぼっちで怖くて、わたしがどんなに花道に救われていたか知った。どうしても花道の側に戻りたくなった」
「だからって、んな無茶な約束……」
「だってわたし、ハタチになったら死ぬつもりだった」
また無茶なことを雪は言う。笑うように喉を震わせて、「バカだよね」と彼女自身独白した。
「まだ六年もあるって思ったんだ、そのときは。六年のうち、五年は花道の側にいて、最後の一年だけ父さんのために働いて、それで死んでしまおうって、本気で思ってたんだ。先のことなんて、何にも考えてなかった。側にいたらもっとずっと側にいたくなるとか、そんなことも考えなかった。それでも、一昨年の夏に、父さんに会いに行ったときは、ちゃんと前を向こうって思ってたんだ。花道が見つけたんだから、わたしも見つけたいって。おじさんが言ってた、必要とされ期待されるものを。それで、父さんとも母さんともちゃんと向き合おうって」
雪は自分の両腕を抱きしめていた手から力を抜いた。顔を上げ、右手の指先を伸ばして、薄汚れたロッカーに触れる。その記された名前に。
「二年前の夏。花道のお陰で、わたしはやっと花道に依存することをやめられた。そして、自分の道をちゃんと歩こうと思った。卒業したらアメリカに行くって、わたしが決めたのは、その一歩目だったの。そのときは思ってもみなかった」
雪の指がまるで慈しむようにその名前に触れる。それは花道の知らない仕草だった。その瞬間だけ雪は、花道の幼馴染の雪ではなく、まるで知らない女だった。
「花道以外に、離れたくない人ができるなんて。この人の隣でずっと笑ってたいって思える人ができるなんて」
「ベタ惚れってやつか」
無理矢理笑って花道は言った。そうしなければ泣いてしまいそうだった。雪の気持ちが理解できすぎて。
「そうだね、うん、そうだ。すごく、好きだよ。……流川のことが」
流川楓。ネームプレートのその文字を、愛おしそうに雪は撫でた。
何か嫌なことがあると、貪るように本を読むのは雪の悪い癖だった。流川は主のいない、ななめ二つ前の席を、横目で見て思う。もう少し深く言うなら、すぐに逃げ出したり見ない振りをするのが、雪の悪い癖なのだ。嫌なものに蓋をするように、見ようと向き合おうとしない。本人もそれを理解している分、余計に厄介だ。そのことに口を出されると激昂する。そしてできたのがこの頬の傷だった。
指先でくっと抑えると鈍く痛む。今朝、この殴られて青く痣になった頬が母親に見つかってしまった。母の花世子は、最近流川の外泊が多いことを不審がっているから、この痣のこともひどく心配していた。そのことを思い出して少し憂鬱になると共に、雪は自分のこういうところが癇に障るのかもしれないと流川は思った。つまり、ごく普通の家庭で育ってごく普通に愛されていることが。
そんなことは、流川が悪いのではない。雪だって理解している。教師が黒板に記す問題を解きながら、流川は考えた。液体中の圧力は、深さに比例する圧力と大気圧pの和になることを顧慮すると、円柱の上面にはたく力の大きさ、下面にはたらく力の大きさは?そう考えるならば、それは癇に障るというより気後れするというほうが合っているのかもしれない。雪の家には、父親や母親を匂わせるものが、ただのひとつだってなかったから。
―そんなこと、わかってる。
あの日、のめりこむように、本の中へ逃避するように、一日中活字から目を離さない彼女の手から本を取り上げた。すると雪はそう言って怒った。
―でも流川に、言われたくない。わたしの気持ちなんて、きっと流川に理解できない。
その通りだ、流川は雪のことをあまり理解できない。なぜなら、彼女自身が喋らないからだ。それなのにその言葉を吐くのは、卑怯ではないかと流川は思う。実際、そう言ったのだ。
―こんなこと、話してどうするの?もう過ぎたことで、もうどうにもならないことなのに?
それこそが逃げなんじゃないのかと流川は言った。多分、それがタブーだった。雪は突然流川に掴みかかってきて、床に引き倒され、拳で頬を殴られた。人の上に馬乗りになった雪は、加害者だというのに泣きそうな顔をしていた。
上面が「pSxg+pS」、下面が「pS(h+x)g+pS」。教師が黒板に記したものと一致した自分の回答に、流川は小さく息を吐く。そっと触れた左頬はやはり痛んだ。
「ほんっとお願いします。雪さんと仲直りしてください」
そう言って頭を下げたのは、今年の春の入学したばかりの清田紺だった。流川は紺を横目で一瞥したが、何も答えずにまた目を閉じた。椅子の背もたれに背を預けて、「ほんとに怖かったんすから!」と捲くし立てている紺の声ではなく、イヤホンから聞こえてくる音に耳を澄ます。昨年発売されたプリンスのアルバムだった。このアルバムのジャケットを見て、「奴隷」と一言呟いたのは雪だ。正しくは、「SLAVE」と言ったのだが。
スレイヴ、奴隷。雪は何を思ってこれを言ったのだろう。ジャケットの写真の男を指して言ったにしては、その言葉はあまりに重たく聞こえた。もっとも、雪からその言葉を聞いたときには、この男に纏わる話をまだ知らなかったから、余計奇異に映っただけなのかもしれないが。
「流川さん、聞いてます?」
苛立たしそうに紺が流川の顔を覗き込んで聞く。やはり清田と似ているなと、彼を見て流川は思った。なんというか、思い込みが激しく、また、思い込んだら一直線なところが。それは幼さとかそういうものではなく、元から彼らが持っている資質なのだと流川は思った。
「紺。教室帰れ」
流川は簡潔に言った。五限と六限の間の、たった十分ばかりの休み時間にわざわざ三年生の教室に来るなんて、まったく頭が下がる。もう一時間もすれば部活が始まるのだから、そのときに言えばいいのに。
「やっすよ。つーか、雪さんはどこ行ったんすか」
「知らねー」
「知らねー、じゃないっすよ」
もう、とぶつぶつ文句を言いながら、紺は側にいた女子に雪の行方を聞いた。「ねえねえ」とまるで子どものように話しかける紺に、女子は苦笑している。
「え、五限ときからいなかったんすか?」
「うん。一ノ瀬さんって、結構サボり魔みたいよ」
結構どころでなく、かなりサボっている。特に今日などは、学校に来るだけ来てほとんど授業に出ていない。遅刻してきたと思ったら、三限の数学だけ出てまたどこかに行ってしまった。
「ちょっと流川さん。雪さん大丈夫なんすか、そんなことしてて。ほら、卒業とか、進学とか」
紺が振り返って、潜めた声でぼそぼそと流川に聞く。だからなんでオレに聞くんだと問いただしたくなった。
「さーな」
「さーな、じゃないっすから!」
けれどそんなことはせずに、また曖昧な返事をした流川に紺が噛み付く。何かに似てると思ったら、犬に似ているのか。流川はギャンギャン喚く紺を見て思った。ぼうっと喚く紺を見ていたら、耳のイヤホンを掴まれて、引っこ抜かれた。引っこ抜いたイヤホンを耳に当てて、「げ!洋楽!」と紺が叫んでいる。返せと手を伸ばそうとしたら、ふと紺が手を止めて教室の入り口のほうを見た。
「あ、雪さん」
つられて入り口の辺りを見ると、確かに雪が立っていた。そしてその後ろにいるのは、花道か。相変わらず赤い髪の花道に雪は手を振り、教室の中に入ってきた。入り口の側の席にいた少女に何か話しかけれられて、困ったように微笑んでいる。大方、「どこに行ってたの?」などと聞かれたのだろう。流川を目を逸らした。
「雪さん!」
紺が雪を呼ぶ。雪が一瞬だけ自分を見たような気がした。が、見てはいないので本当かどうかはわからない。「雪さん」。紺はまるで犬のように、雪のほうへ近寄っていく。紺が無意識に離したイヤホンを捕まえて、また耳にねじ込んだ。あるいは、自分のこれも逃避であるのか。そう思った瞬間に、女の喘ぎ声がイヤホンから流れ出して、流川は眉を顰めた。紺がこれを聞かなくてよかった。聞いていたらきっとまたうるさかっただろうから。
コーンとチャイムが鳴り響く。やばいやばいといいながら、ばたばた廊下を走っていく紺を見る雪の目は優しかった。
"come"
イヤホンを伝って女が囁く。そして男が。触れたいと思った。その手に頬に、体に。
いつまでケンカしてるつもりなのようと晴子は頬を膨らませた。雪はそんな晴子を笑った。まるで動物か何かみたいだ。笑うと、晴子はますます頬を膨らました。
「もう。雪ちゃんと流川君がケンカなんかしてるから、みんな大変なんだから」
「……うん、ごめんね」
甘えてばかりだなあと雪は眉尻を下げた。晴子だけじゃない。洋平にも花道にも紺にもバスケ部のみんなにも、流川にも。いつからわたしはこんなに弱くなったのかなあと雪は首を傾げた。昔はそんなに、甘えてたこともなかったような気がするのに。
「わたしに謝るんじゃなくて、流川君に謝るの。ちゃんと謝ってね」
「……はい」
晴子は最近なんだか、彩子に少し物言いが似てきたような気がする。十センチほど身長差のある晴子に、有無を言わせず言われて、雪は大人しく項垂れた。なんだかもう、晴子には敵いそうにない。
「流川君は口下手だから、雪ちゃんから話しかけないかぎり、きっと話してくれないよ」
ひどい物言いだけど、この子、昔は流川のこと好きだったんだよなあ。雪は感慨深く思ってしまう。やっぱり、人って変わるものなのだ。強くなったり弱くなったり、優しくなったり意地悪になったり。
「このままお別れなんて、雪ちゃんイヤでしょう?」
「……うん」
若干顔を俯けて雪は頷いた。すっかり見抜かれてしまっている。洋平にも晴子にも。そんなにわかりやすいかなあと思っていると、晴子が、「雪ちゃん、流川君のこと、大好きだもんね」と言って笑った。こんな人の多い廊下で言わないで!雪は両手で頬を包み込んだ。多分赤くなるだろうから。
「と、とにかく!今日は国理補習があるから、部活行くの遅れるからね!」
それだけ言って踵を返す。周りにいた人が、急に大きな声を出した雪を不思議そうに見る。居た堪れなくなって雪は早足で歩いた。
「雪ちゃん!」
少し向こうで晴子が呼ぶ。振り向くと晴子はにこっと笑って言った。
「頑張ってね」
何を、なんて聞かなくてもわかった。雪は嬉しくなって目尻を細める。本当に甘えてばかり。でも悪い気はしなかった。
「うん」
頷いて、雪は破顔した。
補習の授業が終わると待たずに教室を出て行ってしまった流川を追って、雪も教室を出た。今日補習があったのはこのクラスだけだったので、校舎の中には人影がない。遠くで廊下の角を曲がった流川の背中を追って、雪は駆け出した。
「流川!」
雪が呼ぶと、階段の中腹にいた流川は気だるそうに振り向いた。振り向いただけで、何も言わない。
「……えっと」
何か言わなければと思うのだが、いざとなると言葉が出てこない。階段の中ほどからじっと自分を見上げる流川は何も言わない。雪は一度大きく息を吸い込んでから、吐いて、言った。
「ごめんなさい」
同時に頭を下げる。さらりと自分の髪が重力に従って揺れた音がした。ゆっくりと顔を上げる。流川はやっぱり何も言わない。
「『流川に言われたくない』とか、ひどいこと言って、ごめんなさい。気に入らないこと言われたからって、殴って、ごめんなさい。反省してる」
顔を俯けたままでそう言っても、流川は何も言わないままだった。よっぽど怒っているのか。雪は不安になって顔を上げる。するとやっと流川が口を開いた。
「オレは桜木や水戸のように、おめーのことをわかってやれねー」
雪から目を逸らして、流川は独白するように言った。ああ、と雪は思った。雪自身、理解してもらえないことが悲しかったように、流川だって悲しかったのだ。そのときやっと知り得た。
「話さねーんだったら、余計にだ」
「……うん」
でも話せないよ、と雪は思った。自分が思ってることを全部全部流川にぶちまけてしまったら、きっとすごく重たいだろうから。あと一年というこの痛みも苦しみも憎しみも涙も不安も全部ぜんぶ。己の全てを見せ合うことは、決して愛ではないのだと雪は思った。辛いことも何もかもを全部、分かち合いたいと思うけれど、逆にそれで流川のことを煩わせるのが嫌だった。雪は、バスケットゴールを一心に見ている流川の背中が一番好きだったから。
自分も流川も何も言わない。しんと沈黙が支配している。沈黙の後に、流川は諦めたかのように息を吐いた。ごめん。声に出さずに謝る。言えなくて、ごめん。
「話さねーんだったら、じゃあ、他の誰にも話すな。桜木にも水戸にも赤木にも、誰にもだ」
雪を睨み上げて流川が言う。命令的な口調だった。だけどとても嬉しかった。自分の全てを流川が求めてくれているようで、とても。
「約束する。誰にも話さない」
雪が言うと流川はやっと鋭かった目を緩めて、「部活、行くぞ」と顎で体育館を指した。「うん」。雪は頷いて階段を下りる。
流川に近づくにつれて、彼の頬にできた痣がくっきりと鮮明になって、雪は罪悪感を覚えた。絶対、痛かった。関節を立てて力いっぱい殴ったから、絶対に。
「ごめんね」
流川から二段上の段に並ぶと、やっと彼の頬に手が届く。流川は背が高いから、同じ高さに立っていたら、いつも彼に手が届かなかったのだ。いつもと逆転した目線に、胸の奥がぎゅうと苦しくなる。流川に見られるのは、嬉しいけれど同時にとても苦しいままだった。二年生の秋から変わらず、ずっと。
雪の指が流川の頬に触れると、流川はほんの少しだけ眉を顰めた。雪は手を引く。「ごめん」。もう一度囁いた。今度は流川の手が雪に伸ばされて、後頭部を掴まれて、引き寄せられる。下から唇を押し当てられて雪も目を閉じた。ゆっくりと距離が開く。一日ぶりに触れた皮膚は熱かった。
「してくれたら、許す。あんたから」
「……え、は?」
目を見開いた雪に、流川がもう一度唇を寄せる。今度は一瞬、軽く。
「早く」
「え、や、でも……」
「雪」
少し掠れた声で名前を呼ばれて、雪は泣きたくなった。そんな声で呼ぶなんて、ずるい。恥ずかしくて目尻に涙が浮かんだ。顔が赤いのが自分でわかる。触れられる位置にある流川の肩に触れて、そっと顔を寄せる。至近距離で交わった目線、流川は笑っていた。とても楽しそうに。「……バカ」。小さな声で呟いて、唇を押し当てる。
腰を掴まれてぎゅうと抱き寄せられて、雪も流川の首に抱きついた。体が宙に浮かぶ。流川と同じ段に足をついた雪は、背中を後ろの柵に預けた。流川の襟足を撫ぜる。流川は腰を屈めて雪がもたれている階段の柵に片手をついた。もう片方は雪の腰を抱きこんでいて、逃げないように捕まえられているみたいだと思った。
惜しむように下唇を唇で食んで、流川はやっと放した。少し息が上がっている自分と違って流川は平静そのもので、雪はいつもそのことをずるいと思ってしまう。何だか、自分だけ余裕がないようで。
息が上がっている雪を見て、流川が薄く笑う。かぷりと首筋を噛まれて、皮膚を舌の先でつつと舐められて、雪は「ん」と声を漏らした。「ちょっと」。声を上げて流川の髪を掴んだ雪を丸っきり無視して、流川の左手が服の上から乳房を掴んだ。
「や!」
親指の腹で先っぽをぐりぐりとされて、雪は思わず悲鳴を上げた。流川の胸を押して距離を取ろうとするのだけど、逆に抱き込まれてしまった。「ここ、学校!階段!」。今更叫ぶのだけど、流川は聞く耳を持たず、雪の耳を舐めてくる。あむとほとんど耳全体を口の中に含まれてしまって、ぞぞと寒気が背中を走った。
「ぶ、部活、……や、やだってばぁ、行く、んで、……しょ、ゃん!」
背中をばんばんと叩いてみても、流川は放してくれない。こんな馬鹿みたいな声、人に聞かれたら、恥ずかしさで死ぬ。今度こそ死ぬ。そう思って雪は必死に流川の学ランの裾を引いた。ぐいぐい引くと、やっと流川が雪の耳から顔を上げた。唾液でべたべたになったになった耳に空気が触れて、つんと冷える。背筋がぞくりとする。肩を震わせた雪を、流川は満足そうに見ていた。
「る、……流川のバカ!エロ!」
べたべたになった耳を手で拭いながら雪が叫ぶと、流川は顔色ひとつ変えずに言った。
「あんたもな」
もう一度馬乗りになって殴ってやろうかと雪はそのとき強く強く思った。
洋平。呼ぶと彼はゆっくり緩慢に振り返って雪を見た。いつもの通り、頬を緩ませる。
「仲直り、したんだってな」
頷くと、洋平は喉の奥を震わせて笑った。くくく、と至極おかしそうに。
「あの、二年生のセンターのでかい奴。アイツが昨日の放課後、階段の辺りに蹲ってるからさ、具合でも悪いのかと思って、声かけたら、流川とお前が階段でいちゃついてるから降りられませんとか、真っ赤な顔で言ってさあ」
笑い混じりだった声が、そこで爆発した。「お前らもうちょっと場所考えろよ」。けらけらと笑う洋平は堪えきれないというように、コンクリートの床を叩いた。その拍子に指の中の煙草から灰が落ちる。あまり嗅ぎ覚えのない臭いだった。横に放られているパッケージを見ると青地に兜のロゴが描かれていた。
「先輩にもらった。重てーよな、コレ」
雪の心を読んだように洋平が言う。いつもはこんなことをしないから、よほど口に出してほしくないのだろうと雪は思った。馬鹿笑いも、ころころと移り変わる話題も、雪に口を開かせないためだけの。
「洋平」
その先輩とやらのバカ話を始めた洋平の声を遮って、雪は彼の名前をもう一度呼んだ。昔、一字一字丁寧に発音するお前の呼び方が好きだと言われたことがある。だから、雪は、ずっと、洋平の名前をぞんざいに呼べなかった。母音まで飛ばさず一字一字くっきりと。よ、う、へ、い。
「気づかないままでいてくれないか」
笑うのをやめて洋平が言った。懇願するような口調とは裏腹に、命じるような声音だった。そういうところがとてもずるい男だと思う。自己コントロールが上手すぎるのだ。
雪は首を振った。だって気づいてしまった。洋平は困ったように言った。
「オレはお前とどうこうなろうなんて気は、これっぽちもねえんだ。昨日のは、ちょっとした冗談」
「というか、皮肉でしょ?」
「そうとも言うけどな」
曖昧に笑う顔に、笑うな!と叫びたくなった。こんなときまで笑うな。すると、「そんな顔するなよ」と苦笑された。
「じゃあ一個だけ、オレとお前だけの秘密を作ってくれ。流川にも花道にも誰にも言うな。オレとお前だけの」
苦笑いのままで洋平が言う。雪は「いいよ」と頷いた。洋平はゴロワーズをコンクリートに押し付けて消す。この特徴的な匂いが雪は嫌いではない。嫌いでは、ないのだ。
「オレ、ずっと言わなかったけど、お前のことが好きだ。多分、流川と同じくらい」
うん、と雪は頷いた。自分でもわかった。泣きそうな声だった。わたしはいつも、気づかないところで人を傷つけている。
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