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呪術廻戦
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名探偵コナン
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概要
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No.14
#呪術廻戦
乙骨憂太✖️同級生(恋人?) ⚠️首締め描写・コミック未収録分ネタバレあり
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憂太が口を閉ざして、意味ありげにこちらをじっと見る。彼が感情を悟られたくないときのよくやる癖のようなものだった。瞳というものはいつも雄弁で、彼が心を変えるつもりがないことを鮮明に伝えてくる。そこに愛も恋も差し込む隙間がないというのなら、なぜ彼は愛とか恋とかそういうものを持って生まれてきて、私はそういう感情を彼に抱いてしまったのだろうか。
いやだ、という一言では彼を引き止められない。やめてという懇願では鎖にならない。なら、何を賭ければいい? 聞いたって言葉は返ってこない。返ってくるわけがない。
「憂太がやらなくても、いいでしょ……」
ようよう言ったありきたりな文句に、彼は失望したみたいに目を細めた。聞こえない、押し殺したため息が聞こえる気がした。
「みんながそう言うんだ」
「みんながそう言うから、誰もやらないままなんだ」
「じゃあ僕がやらないって言ったら、君がやってくれるの?」
怒りさえ滲んだ口調で責められて、私は今度こそ何も言えずに俯いた。憂太が乱雑に自分の髪をかき混ぜる音が聞こえる。違う、そうじゃない、それが言いたいわけじゃない。
「…………やる」
「え?」
「それで憂太がやらなくてすむなら、私がやる、私が化物でもなんでも、やってやる」
「…………馬鹿じゃないの」
憂太らしくもない、ひどくありふれた罵倒に、はっと顔を上げた。憂太は今度こそ瞳に強い怒りを滲ませて、私を見ていた。「だって、」 言いかけた言葉は、それ以上にはならなかった。鋭く伸びてきた憂太の手のひらが、ぐっと私の首の柔いところ、頚動脈を締め上げる。
「馬鹿じゃないの、僕にこんな風に簡単に殺されかけて、なのに君が怪物になるだって? 思い上がりもほどほどにしなよ」
苦しい、怖い、息ができない、憂太、なんで、
頭の奥が完全に白む前に手を離されて、けたたましい咳と共にやっと息を吸う。急に血が巡ったせいで少し赤く明滅する視界と、その向こうの憂太と。憂太は氷みたいな表情で私を見下ろしていたけれど、握った手のひらが拳が、小さく震えているのが見えた。
彼をここまでさせるほど、追い詰めたのは私自身だ。他者に優しく善意の人であろうと努める彼に、こういう形でしか発露できないような話し合いの仕方を持ちかけたのが私だ。でもさ、でも、だって。
「憂太がいなくなったら嫌だって、ならなんで君が、理解してくれないの」
滲んだ視界を腕で覆う。結局泣くしかできないから私は弱い。真希にはなれないし、里香になれない。
「ごめんね」
小さく謝る目の前の同級生の服の裾を掴んで、行かないでって惨めでもなんでも泣き縋って。それで行かずにいてくれるなら彼は乙骨憂太じゃない。
そうわかっているのに、今もまだ、閉じた扉が開くことを期待して嗚咽を溢している。今も、まだ。
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1253文字,
2024.11.05 20:56
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乙骨憂太✖️同級生(恋人?) ⚠️首締め描写・コミック未収録分ネタバレあり
憂太が口を閉ざして、意味ありげにこちらをじっと見る。彼が感情を悟られたくないときのよくやる癖のようなものだった。瞳というものはいつも雄弁で、彼が心を変えるつもりがないことを鮮明に伝えてくる。そこに愛も恋も差し込む隙間がないというのなら、なぜ彼は愛とか恋とかそういうものを持って生まれてきて、私はそういう感情を彼に抱いてしまったのだろうか。
いやだ、という一言では彼を引き止められない。やめてという懇願では鎖にならない。なら、何を賭ければいい? 聞いたって言葉は返ってこない。返ってくるわけがない。
「憂太がやらなくても、いいでしょ……」
ようよう言ったありきたりな文句に、彼は失望したみたいに目を細めた。聞こえない、押し殺したため息が聞こえる気がした。
「みんながそう言うんだ」
「みんながそう言うから、誰もやらないままなんだ」
「じゃあ僕がやらないって言ったら、君がやってくれるの?」
怒りさえ滲んだ口調で責められて、私は今度こそ何も言えずに俯いた。憂太が乱雑に自分の髪をかき混ぜる音が聞こえる。違う、そうじゃない、それが言いたいわけじゃない。
「…………やる」
「え?」
「それで憂太がやらなくてすむなら、私がやる、私が化物でもなんでも、やってやる」
「…………馬鹿じゃないの」
憂太らしくもない、ひどくありふれた罵倒に、はっと顔を上げた。憂太は今度こそ瞳に強い怒りを滲ませて、私を見ていた。「だって、」 言いかけた言葉は、それ以上にはならなかった。鋭く伸びてきた憂太の手のひらが、ぐっと私の首の柔いところ、頚動脈を締め上げる。
「馬鹿じゃないの、僕にこんな風に簡単に殺されかけて、なのに君が怪物になるだって? 思い上がりもほどほどにしなよ」
苦しい、怖い、息ができない、憂太、なんで、
頭の奥が完全に白む前に手を離されて、けたたましい咳と共にやっと息を吸う。急に血が巡ったせいで少し赤く明滅する視界と、その向こうの憂太と。憂太は氷みたいな表情で私を見下ろしていたけれど、握った手のひらが拳が、小さく震えているのが見えた。
彼をここまでさせるほど、追い詰めたのは私自身だ。他者に優しく善意の人であろうと努める彼に、こういう形でしか発露できないような話し合いの仕方を持ちかけたのが私だ。でもさ、でも、だって。
「憂太がいなくなったら嫌だって、ならなんで君が、理解してくれないの」
滲んだ視界を腕で覆う。結局泣くしかできないから私は弱い。真希にはなれないし、里香になれない。
「ごめんね」
小さく謝る目の前の同級生の服の裾を掴んで、行かないでって惨めでもなんでも泣き縋って。それで行かずにいてくれるなら彼は乙骨憂太じゃない。
そうわかっているのに、今もまだ、閉じた扉が開くことを期待して嗚咽を溢している。今も、まだ。
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