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五条弾とくのたまちゃん
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概要
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2025年6月24日
の投稿
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件]
#五条弾とくのたまちゃん
デフォ名垂れ流し
07.車窓(うたたね/吐息/踏切)
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五条がどこそこに行こうよ、というと着いてきてくれるけれど、基本的に彼女は出不精である。
出かけるのが嫌いなのではなく、家の中でできる遊びのほうが大好きなので、五条が「どこかミヨシちゃんの行きたいところに行こうよ」と言っても「おうち」と言われて二人で映画を見たり各々本を読んでいたり、五条の部屋に着々と増えつつある調理器具と製菓器具を使い彼女が何か作っているのを眺めるとか、そういうことになる。
別にお家で彼女とイチャイチャしながらゆっくりするのも嫌いじゃないけれど、かわちい彼女を着飾って連れ出すことも五条さんは大好きなだけである。
その彼女が、珍しく少し山奥にある美術館に行ってみたいと言ったので、そこへ行った帰りだった。朝が早かったし昨日は遅くまで彼女をいじめ抜いていたため、帰りの車で寝てていいよ、と言うと彼女は首を横に振ったけれど、数分後には小さな寝息が聞こえていた。
付けっぱなしにしていたカーラジオの音量を少し絞って、車窓から流れる夕焼けの風景と静かな彼女の寝息だけを聞いている。20分ほどしてカーナビが高速料金の支払い額を告げたときに、彼女はゆっくりと目を開けた。
「寝てた……。ごめんなさい」
「まだ寝てていいよ」
「やだ」
彼女は小さく言って、辺りをきょろきょろと見回す。もう高速を降りて自宅近くの街にいると理解した彼女は、ぼんやりと窓の外の暗くなっていく夕焼けを眺めた。
「美術館、きれいだったね」
「うん。行けてよかった。五条さんありがとう」
ちまちまと小さく繰り返し些事の礼を言う彼女は、何というか、育ちのいい子だと思う。村で大人の中でチヤホヤ大事にされて育てられてきたので、そういう礼儀みたいな面がとても強く仕込まれているのを感じる。
彼女は車窓の外の風景を眺めてから、踏切待ちでギアを一度パーキングに入れた五条のほうをちらりと見た。五条も同じくちらりと彼女に目線をやると、彼女は恥ずかしそうに目線を逸らしたまま、五条がハンドルから離して自分の太腿の上に置いていた手を、そっと握った。
もちもちと勝手に五条の手のひらを握って触って、手遊びを始めた彼女は、この踏切がとても長くてこの時間に捕まったら少なくとも5分は開かないことをよく知っている。
にぎ、にぎ、と指を絡めるように握って互いの皮膚の手触りを楽しむ。帰ったら買った図録を広げて二人で眺めようかな、と思っていたけど、この調子では彼女をまたベッドに引っ張り込むことになりそうだ、と思った。
まだ大丈夫だろうと思ってこっそりキスしていたら後ろから軽くクラクションを鳴らされたので、五条は慌ててギアをドライブに入れて、恥ずかしそうに彼女自身の前髪を引っ張って顔を隠して俯く彼女を横目に、アクセルを踏んだ。
後ろの車からキスしてるとこ、見えちゃったかもしれないね、と五条が小声で言ったから、彼女は恥ずかしくて泣きそうになっている、というワケである。
だって彼女の大好きな五条のお兄さんは『そういう』ときだけとんでもなく、意地悪になってしまわれるお方であるので。
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1332文字,
2025.06.24 12:31
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デフォ名垂れ流し
07.車窓(うたたね/吐息/踏切)
五条がどこそこに行こうよ、というと着いてきてくれるけれど、基本的に彼女は出不精である。
出かけるのが嫌いなのではなく、家の中でできる遊びのほうが大好きなので、五条が「どこかミヨシちゃんの行きたいところに行こうよ」と言っても「おうち」と言われて二人で映画を見たり各々本を読んでいたり、五条の部屋に着々と増えつつある調理器具と製菓器具を使い彼女が何か作っているのを眺めるとか、そういうことになる。
別にお家で彼女とイチャイチャしながらゆっくりするのも嫌いじゃないけれど、かわちい彼女を着飾って連れ出すことも五条さんは大好きなだけである。
その彼女が、珍しく少し山奥にある美術館に行ってみたいと言ったので、そこへ行った帰りだった。朝が早かったし昨日は遅くまで彼女をいじめ抜いていたため、帰りの車で寝てていいよ、と言うと彼女は首を横に振ったけれど、数分後には小さな寝息が聞こえていた。
付けっぱなしにしていたカーラジオの音量を少し絞って、車窓から流れる夕焼けの風景と静かな彼女の寝息だけを聞いている。20分ほどしてカーナビが高速料金の支払い額を告げたときに、彼女はゆっくりと目を開けた。
「寝てた……。ごめんなさい」
「まだ寝てていいよ」
「やだ」
彼女は小さく言って、辺りをきょろきょろと見回す。もう高速を降りて自宅近くの街にいると理解した彼女は、ぼんやりと窓の外の暗くなっていく夕焼けを眺めた。
「美術館、きれいだったね」
「うん。行けてよかった。五条さんありがとう」
ちまちまと小さく繰り返し些事の礼を言う彼女は、何というか、育ちのいい子だと思う。村で大人の中でチヤホヤ大事にされて育てられてきたので、そういう礼儀みたいな面がとても強く仕込まれているのを感じる。
彼女は車窓の外の風景を眺めてから、踏切待ちでギアを一度パーキングに入れた五条のほうをちらりと見た。五条も同じくちらりと彼女に目線をやると、彼女は恥ずかしそうに目線を逸らしたまま、五条がハンドルから離して自分の太腿の上に置いていた手を、そっと握った。
もちもちと勝手に五条の手のひらを握って触って、手遊びを始めた彼女は、この踏切がとても長くてこの時間に捕まったら少なくとも5分は開かないことをよく知っている。
にぎ、にぎ、と指を絡めるように握って互いの皮膚の手触りを楽しむ。帰ったら買った図録を広げて二人で眺めようかな、と思っていたけど、この調子では彼女をまたベッドに引っ張り込むことになりそうだ、と思った。
まだ大丈夫だろうと思ってこっそりキスしていたら後ろから軽くクラクションを鳴らされたので、五条は慌ててギアをドライブに入れて、恥ずかしそうに彼女自身の前髪を引っ張って顔を隠して俯く彼女を横目に、アクセルを踏んだ。
後ろの車からキスしてるとこ、見えちゃったかもしれないね、と五条が小声で言ったから、彼女は恥ずかしくて泣きそうになっている、というワケである。
だって彼女の大好きな五条のお兄さんは『そういう』ときだけとんでもなく、意地悪になってしまわれるお方であるので。
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