ご冗談でしょ!お嫁ちゃん
=== ここから クソ雑導入RTA ===
結婚したよ!!の2〜3年後!!!
=== クソ雑導入RTA ここまで ===
タソガレドキの城に泊まり込んでもう一週間になる。少し前に、忍術学園でくのたまをしていた娘を嫁にもらった五条は、家に帰れないということにさめざめと泣いていた。
つらい苦しい、心に栄養が足りていない、ハムスターもちもちはどこ……。
ごりごり仕事は進めながらでも、ぶつぶつとその泣き事を言うのはやめないので、先輩忍者に何度か頭をぶっ叩かれていたが、五条が気にした素振りはなく、ただ泣き事を言い続けるのであった。
彼女は一応は黒鷲隊の所属であるが、タソガレドキ忍軍はほぼ男性で構成されており、女性がいない。その中で男性忍者と同じ仕事は彼女の忍者としての力量からも危うかろうと、城主の黄昏甚兵衛の奥方や娘付となった。
甚兵衛の奥方のところは、9時始まり18時終わり、休憩は奥方たちと一緒に食事をしてからその後1時間、土日祝休みで年間休業日数125日以上で残業は基本なし、もし発生した場合は残業代全額支給でかつ、有休消化率70%のドドドドドホワイトな職場である。黄昏甚兵衛奥方様見習え。
そういうわけで、かわちい嫁は家で待っている。なのに自分は家に帰れない。やっとやっとやっと、一期上の彼女の兄貴分を全員ぶちのめして嫁にもらってきたのに……。案外、善法寺伊作が一番エグくてヤバかった。組頭はそのヤバさに大喜びしていた。
というわけで、嫁にもらってきてから半年だが五条は絶賛新婚ご家庭中なので、同僚たちからしらじらした目を向けられ、押都からは「まぁ仕事するならなんでもいい」みたいな感じで思われていた。
そんな風にハムスターの幻覚を見、めそめそしながら仕事をしていたので、最初黒鷲隊の詰め所の入り口にちまっとした女の子が見えたときは、五条は自分の幻覚かと思った。
ややあって、それが幻覚ではないと理解する。
「五条さん!」
夫婦になっても未だに「五条さん」と呼ぶ彼女を、五条はそれはもうめちゃくちゃ可愛がっている。突然現れた嫁に、五条は慌てて席から立つと、「え、どうしたんですか……?」と優しい口調で問いかけた。
ちなみにこの二人、まだ彼女は「五条さん」と呼ぶし、五条も丁寧口調で彼女に話しかける。五条なんて、修羅場が深まってくると、何を聞いても「なんでもいいだろそんなの……知らんが……」とか口の中でもごもご言って、ヒトゴロシの目で舌打ちする奴なのにと周りは思っている。よくねぇから聞いてンだ。
「お仕事が忙しいと奥方様から聞いたので、お着換えと、少しの差し入れを黒鷲隊の皆さまにも」
「そんな、気にしなくてもよかったんですよ」
彼女が持ってきたのは大量の握り飯だった。せっせと彼女がこさえてくれたのだろう。いやなんで他の男にこのかわちい子の差し入れわけてやられねばならんのだ?と思っているが、大人のお兄さん的態度を未だに崩さない五条は彼女の前で大っぴらに舌打ちしない。
しぶしぶ押都に彼女が持ってきたその握り飯をお渡しし、黒鷲隊も一時休憩となった。「こっちが五条さんの分です」と言って彼女が出してきたのは明らかに別で作った弁当で、五条はそのまま彼女を連れて黒鷲隊の詰め所を出た。
廊下を行き、城内でも人気の少ない庭先に出る。奥まった場所にあり人目につきにくいため、城内カップルの逢引の場として使われる場所だ。まだ日暮れ前の時間では、誰も寄り付かないだろう。
「お仕事大変ですか?」
「目途は見えてきたので、あと二週間ほどで片がつくと思います」
彼女が作った弁当を食べて、水筒で持参してくれたお茶を飲んで一息つく。五条の返答に彼女は「まだそんなに」という顔をしたが、口には出さなかった。
五条は少し困って微笑んで、彼女の頬をむにむにと親指で擦る。彼女は今もう十七歳ほどになって手足がすらりとして大人に近づいてきてはいるが、何かを食べたりにこにこ笑っているところは、相変わらずハムスターにそっくりのむちむちチュムチュムした女の子なのであった。
「なるべく早く終わらせられるように努力します。あなたも、奥方様のところで励んでください」
「はい!」
五条が彼女の頬を撫でながらいうのに、彼女は大きく頷いて笑う。五条はそんな彼女の笑みを優しく見ながら、ふと彼女が今もまだ首元に巻いている頭巾の布を、はらりと抜き取った。
「どうしたんです?」
「少し、黙っていて」
彼女の頭からその布をかぶせ、頬に手を添えてそっと顔を近づける。遠くから誰かがこちらの様子を面白がって見ているのには気づいていたから、見せもんじゃねーぞ、という気持ちを込めて頭巾をかぶせたのだ。
ちゅ、と口を食まれて彼女はカっと顔を赤くする。初心い娘の所作に、顔つきに、五条はその彼女の目をじっと見て、もう一度口を吸った。
頭巾の布を頭にかぶせられて、それを両側から引かれている彼女には恥ずかしくても逃げ場がない。じっと自分の目を見ながら、少しだけ意地悪そうな顔をする五条に、彼女の心臓は跳ねて今にも止まってしまいそうだった。
どうやら五条は、とても優しいだけのお兄さんでは、なかったようなのである。
「仕事が片付いてひと段落したら、また続きをしよう」
「お、お待ちしています……」
至近距離でにっこりとほほ笑んで言われて、彼女は息も絶え絶えに言った。
:
「伊作くんさぁ、流石に悪趣味すぎるんじゃない?」
「どうしてですか、可愛い妹を誑かした男が無体を働いていないか、定期的にチェックしておかないと」
「だから、五条はそんな子じゃないって」
「結婚したら急にモラだったことが発覚するとか、よくある話でしょう。
駄目だったら連れて帰りますから、そのためには観察が必要です」
「そう……」
勇ましい元保健委員長の言に、雑渡は何も言えなくなってそのまま押し黙った。
これは要するにモンペだったんだな……と、遠眼鏡まで持ち込んで新婚夫婦の逢引を覗いている伊作を見て、雑渡は思う。
まあまあまあまあ。
ようは都合良くも悪くも、彼女はみんなに愛されている、かわちいかわちいくのたまちゃんだった、という話である。
ご冗談でしょ!くのたまちゃん
―完―
一作品のボタンにつき、一日50回まで連打可能です。
-
ヒトコト送る
メッセージは文字まで、同一IPアドレスからの送信は一日回まで